2020/03/04
中小企業の防災 これだけはやっておこう
2. 火災発生時に求められる初動対応
火災発生時の初動対応には「通報」「初期消火」、そして「避難」という流れがありますが、出火の状況によってその優先順位は変わります。冷静な判断をして、逃げ遅れないようにします。
(1)通報
火災を発見した場合は「火事だ!」と大きな声で2回以上叫び、周囲の従業員に知らせ、その後の対応を大勢で進めることが重要です。また、声が出ないときは、物を叩くなどして知らせましょう。
さらに、落ち着いて119番通報することが求められています。小さな火災でも通報することが重要です。
(2)初期消火
必ず複数の従業員で消火活動に当たることが大切です。消火器から薬剤が出る時間は想像しているより短いため、火元付近にある消火器、そして別の階にある消火器を出火場所に集め、一気に初期消火を進めます。また、屋内消火栓も忘れず活用しましょう。
消火活動中に少しでも危ないと感じたとき、また炎が天井に達した場合などは、無理をせず避難します。逃げるに当たっては、逃げ遅れる従業員がいないことを確認するとともに、防火戸を閉鎖します。
地震発生時に起こる火災の場合は、大きな揺れでケガをしている従業員がいる可能性がありますので、自力避難できない人を避難場所まで搬送します。
(3)避難
避難に当たっては、火災現場である部屋の窓やドアを閉めて空気を遮断します。煙を吸い込まないように、姿勢をできるだけ低く保ちつつ、ためらわず、一気に走り抜けます。また、一度避難し終えたら、二度と建物内には戻りません。
避難終了後は、点呼などにより全員の避難が完了したかどうか確認し、逃げ遅れた従業員がいると分かった場合は、すぐ消防隊に報告します。
避難では、次の点にも注意が必要です。
①避難経路の選択
避難の際は、もちろん出火場所を避け、煙の被害を受けない経路を選択することが大切です。さらに、出火場所付近の階段は使えない可能性が高くなりますので、平常時から2つ以上の避難経路を考えておきましょう。エレベーターは、火災による停電で避難途中に停止することが考えられるため、使用不可です。
②誘導方法
大きな声で、どこから、どこに避難するかを、ハンドマイクなどを使い指示します。誘導に携われる人数が少なく、一度に多くの人数を誘導できない場合は、一時的に屋外階段の踊り場など安全な場所に避難してもらい、その後、地上に誘導することも考えましょう。
3. 消防訓練
火災による被害を最小限にするためには、消防隊が火災現場に到着するまでの間に、自社の従業員が初期消火をどれくらい的確に実践できるかどうかにかかっています。「ぶっつけ本番」で消火活動に当たっても、うまくいくものではありませんので、事前に行う消防訓練が重要となります。
また、防火管理者を選任している防火対象物については、消防計画に基づいて、通報、消火、避難の訓練を実施しなければなりません。特に不特定多数の人が出入りする防火対象物の場合は、消火・避難訓練を年2回以上実施することが求められています。
あわせて、訓練をする場合は、あらかじめ管轄の消防署または出張所に連絡することも必要です。
【ここがポイント】
火災は、まず、さまざまな防火対策でその発生頻度を下げることが重要です。その上で、的確な初動対応を実践することで被害を最小限にとどめます。
1. 平常時からの火災リスクを下げる取り組みが重要
2. 初動対応は「通報」「初期消火」、そして「避難」が基本
3. 消防訓練で防災力を高める
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方