第24回:防災活動の次に考えること その6
BCPの訓練②

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/07/22
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
前回は、策定したBCPの実効性を向上させるために行う「訓練」の重要性と、それを準備するに当たってのポイントを説明しました。今回は、実際に訓練を行う場合の具体的な進め方を解説します。
地震の大きな揺れに見舞われると、従業員はもちろん、建物・設備、そしてライフラインに被害が発生します。その被害状況次第では、事業を継続することが困難となります。また、事業が継続できる場合でも、その水準は被災状況に左右されるので、被災状況を速やかに確認し、その安全を確保する訓練は重要です。
①訓練の流れとポイント
自らの安全が確保できた段階で、周囲の同僚や訪問者に負傷者がいないかどうか確認します。また負傷者が見つかった場合は、安全かつ避難の妨げにならない場所を確保してそこに搬送し、応急手当を実施します。
救急箱や担架など、応急手当に必要な物資が備えられているか、また欠けているものはないかを確認します。消防署および最寄りの医療機関の連絡先は、災害時に慌てないようにリスト化しておき、遅滞なく連絡します。
②レベルアップに向けて検討すること
応急手当を的確に実践するためには準備が必要です。救護班などに所属する従業員は、事前に消防署が実施する普通救命講習や応急救護講習などを受講しておくことが求められます。
また、地震に見舞われた場合、従業員ががれきの下敷きになることも考えられます。公的な救助活動はすぐには行われませんので、バール・毛布・のこぎりなどの資器材をそろえることも検討しましょう。
①訓練の流れとポイント
建物・設備の被災状況確認は目視が基本です。天井・壁・柱・扉・窓などに大きなひび割れや損傷がないか、また従業員に危険を及ぼす場所がないか確認します。危険な場所が見つかった場合は、その旨を表示して立ち入り禁止にします。
その後、必要な応急処置を行うことになりますが、従業員だけで応急処置ができない場合は、修理事業者に対応を依頼します。従業員が修理を行うときは、二次災害とならないよう、必ず複数でチームを組み進めましょう。
②レベルアップに向けて検討すること
社内を回って建物・設備の被災状況確認を行うときは、避難経路となる屋内階段や非常階段などに障害となるものが置かれていないか確認し、見つけた場合は撤去します。
地震では扉が大きく揺れてゆがみ、開かなくなることがあります。完全に開くかどうかを確認することも重要です。
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方