前回は、策定したBCPの実効性を向上させるために行う「訓練」の重要性と、それを準備するに当たってのポイントを説明しました。今回は、実際に訓練を行う場合の具体的な進め方を解説します。

防災活動の次に考えること その6 BCPの訓練②

1. 被災状況確認と安全確保

地震の大きな揺れに見舞われると、従業員はもちろん、建物・設備、そしてライフラインに被害が発生します。その被害状況次第では、事業を継続することが困難となります。また、事業が継続できる場合でも、その水準は被災状況に左右されるので、被災状況を速やかに確認し、その安全を確保する訓練は重要です。

(1)従業員

①訓練の流れとポイント
自らの安全が確保できた段階で、周囲の同僚や訪問者に負傷者がいないかどうか確認します。また負傷者が見つかった場合は、安全かつ避難の妨げにならない場所を確保してそこに搬送し、応急手当を実施します。

救急箱や担架など、応急手当に必要な物資が備えられているか、また欠けているものはないかを確認します。消防署および最寄りの医療機関の連絡先は、災害時に慌てないようにリスト化しておき、遅滞なく連絡します。

②レベルアップに向けて検討すること
応急手当を的確に実践するためには準備が必要です。救護班などに所属する従業員は、事前に消防署が実施する普通救命講習や応急救護講習などを受講しておくことが求められます。

また、地震に見舞われた場合、従業員ががれきの下敷きになることも考えられます。公的な救助活動はすぐには行われませんので、バール・毛布・のこぎりなどの資器材をそろえることも検討しましょう。

(2)建物・設備

①訓練の流れとポイント
建物・設備の被災状況確認は目視が基本です。天井・壁・柱・扉・窓などに大きなひび割れや損傷がないか、また従業員に危険を及ぼす場所がないか確認します。危険な場所が見つかった場合は、その旨を表示して立ち入り禁止にします。

その後、必要な応急処置を行うことになりますが、従業員だけで応急処置ができない場合は、修理事業者に対応を依頼します。従業員が修理を行うときは、二次災害とならないよう、必ず複数でチームを組み進めましょう。

②レベルアップに向けて検討すること
社内を回って建物・設備の被災状況確認を行うときは、避難経路となる屋内階段や非常階段などに障害となるものが置かれていないか確認し、見つけた場合は撤去します。
地震では扉が大きく揺れてゆがみ、開かなくなることがあります。完全に開くかどうかを確認することも重要です。