第23回:防災活動の次に考えること その5
BCPの訓練①
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/07/08
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
これまでに発生した多くの災害を振り返ってみると、実際にBCPが策定されていても、それが十分に活用できたケースばかりではありません。それは、当該BCPが実際に使えるものであるかどうかの検証が不十分であったことが理由であると考えられます。ここでは、策定したBCPの実効性を向上させるために行う訓練について考えます。
訓練の目的をまとめると次のようになります。
(1) 災害時に自社が受ける被害のイメージを明確にする
災害発生時には、企業はもちろん被害に見舞われますが、電気・ガス・水道のライフライン、通信や交通など企業を取り巻く状況も悪化します。また、行政や非被災地域からの支援が必ずしも要請通りに得られるとは限りません。
策定したBCPで対応が可能であるかを確認するためにも、まず自社の被害イメージを明らかにして、それを全員で共有します。
(2)BCPの足りない点を見つけて修正する
リスクマネジメントでは、実際に策定した計画(PLAN)を実行(DO)し、それを評価(CHECK)することで、さらに改善(ACT)する「PDCAサイクル」という考え方があります(図1)。
訓練は、この「PDCAサイクル」の「実行(DO)」に該当します。実際に訓練を実施すると、手順通りに進まないことや足りない資器材が出てくるなど、BCPの不備や欠けている点、つまり落とし穴が明らかになります。そこで、実施した訓練の結果を踏まえて計画を見直し、それに基づいて修正することが重要です。
もし、この「実行(DO)」の手順が訓練という形で行われない場合は、実際の災害で自社BCPの実効性を確認する形になりますから、定期的に訓練を実施することが求められます。
(3)計画への理解を深め、災害対応能力を高める
BCPは、それを策定したメンバーだけではなく、全ての従業員がその内容を理解し、災害時には計画通り動けることが重要です。
従業員が訓練を繰り返すことによってBCPの内容が身に付き、また実際に体を動かすことで、その災害対応能力を高めることができます。
中小企業の防災 これだけはやっておこうの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/09
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/12/05
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方