第22回:防災活動の次に考えること その4
BCP策定の流れ③

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2020/06/24
中小企業の防災 これだけはやっておこう
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、信州大学特任教授として教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
BCPを策定するに当たっては、その手順の全体像を理解しておくことが重要です。前々回、そして前回の2度にわたって、その流れを確認しましたが、今回は最後の手順を説明します。
前回までに、BCPを策定する際の流れ(図1)のうち、(1)から(5)までの流れを説明しました。今回は、それに続く手順「(6)代替戦略」について確認します。
大きな地震や水害に備え、さまざまな防災活動を行っていても、実際にそれらの自然災害が起こると、従業員、建物、そして原材料・部品などの経営資源が欠けたり、不足して事業継続に支障が生じます。
そこでこのような状況に陥った際、欠けた経営資源をどのように代替するかを事前に検討しておき、それを具体的対策としてBCPに落とし込むことが重要です。
被災後の建物に大きな被害がなく、また必要な材料や部品が確保されていても、従業員が不在となれば事業を継続することはできません。
1)業務の標準化とマニュアル化
特定の従業員しかできない業務がある、つまり、業務が属人化している場合、その特定の従業員が被災して欠けてしまうと、当該業務が停止し、事業が継続できなくなります。
このような状況を避けるためには、組織として最適な業務手順を決め、それをマニュアル化しておくことが重要です。そうすることによって、業務を人頼みで回すのではなく、マニュアルという仕組みで回せるようにします。
ただ、この「業務の標準化とマニュアル化」には時間がかかるので、平常時から組織として取り組むことが必要です。
2)応援者の受け入れ
自社の拠点が被災地以外にある場合は、その拠点から支援を仰ぐという対応も考えられます。また、自社を退職したOBなどをリスト化しておき、被災時に協力してもらうことも事前に検討しておくとよいでしょう。
3)感染症への対応にはスプリットチーム制も有効
国内で感染症が流行し、いずれ自社にも影響があると考えられる場合は、スプリットチーム制の導入も有効です。具体的には、社内で感染者が発生しても重要業務が停止しないように、各部門を二つのユニットに分けて交代勤務を行うことで、重要業務が停止しないようにします。
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