左から佐藤健一氏、高橋義宏氏、私:令和元年(2019年)12月28日撮影

東日本大震災の発生から9年。昨年末に宮城県気仙沼市保健福祉部高齢介護課の高橋義宏課長を訪問し、震災後の被災者支援についてヒアリングをさせていただいた。高橋さんは東日本大震災当時、危機管理課で大変なご苦労を重ねられた方だ。

紹介してくださったのは元気仙沼市危機管理監の佐藤健一氏。佐藤さんは私の最も尊敬する自治体職員だ。日常から使えて逃げやすい津波避難ビルを数多く設置し、住民とワークショップを数百回も実施するなど、津波災害を最小限にとどめる努力を重ねてこられた。東日本大震災当時は危機管理課長として、応急対策の最前線で獅子奮迅の活躍をされている。

なお、高橋氏からの聞き取り部分は私がまとめたものであり、必ずしも正確な文言ではない。また、高橋氏からの聞き取りの後に、私のコメントを記す。

Q.当初の被災者支援事業はどのようなものだったか?

【高橋氏からの聞き取り】

・避難所から仮設住宅に移った人をサポートするセンター事業を21名(4地区)で行ったが、在宅被災者やみなし仮設住宅(以下「在宅被災者等」という)の人も回ってもらう必要性があるという課題がみえた。そこで、平成24年度(2012年度)から「絆再生事業」で在宅被災者等の見守り事業を実施した。
・サポートセンター事業の委託地域は気仙沼地区、本吉地区、唐桑地区、室根・千厩(一関)の4地区にした。旧市町村単位のほうが動きやすいからだ。一関市が、縁故がない人、障がいがある人等の、対応が難しい人を受け入れてくれた。本当にありがたかった。
・平成23年度(2011年度)は緊急雇用創出事業で、友愛訪問員(対象は主に高齢者)が応急仮設住宅の訪問を実施した。現在、住宅再建先である災害公営住宅や防災集団移転団地等の支援が生活援助員(LSA)事業だ。

[鍵屋コメント]
日本の被災者対応は、家屋調査をして全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊というランク付けをし、り災証明書を発行するとほぼ自動的に支援メニューが決まる。住宅が損壊して避難所、仮設住宅となった被災者は、その大変さ、困難さが明らかであり、(不十分ながら)支援メニューが準備される。

しかし、在宅の被災者はどうだろう。場合によっては家族を失っているかもしれない、ショックで精神的に辛い状況かもしれない、仲の良い友だちと離れ離れになっているかもしれない。そんな辛い状況にあっても、家が損壊していなければ、支援対象とならず置き去りにされがちだ。

平成24年度(2012年度)から行われた「絆再生事業」は、在宅被災者の見守りをしつつ、必要な支援につなげていく。在宅被災者と伴走型の支援をすることで、再び地域の絆を取り戻すことを狙った先進的事業だ。

また、岩手県一関市が気仙沼市を強力に支援をした事例は、東日本大震災当時にもよく聞いていた。県境を超えて、隣の自治体を必死で支援する姿に、自治体の暖かさを感じる。

Q.現在の被災者支援事業は?

【高橋氏への聞き取り】

・平成28年度(2016年度)は、被災者支援総合交付金で実施した。応急仮設住宅入居者等サポートセンター事業は、社会福祉法人等に委託(看護師等1名、生活相談員2名で1チーム)しており、気仙沼市社協には気仙沼地区(2チーム)、NPO法人には一関地区(1チーム)を巡回訪問等してもらっている。
・令和3年度(2021年度)以降は誰に対して、どの程度の支援が必要かを明確にしてほしいと国に言われている。一方、新たなコミュニティ形成支援事業を実施している。これは、復興住宅等における自治会設立を支援(地域づくり推進課)するものだ。

[鍵屋コメント]
税収が激減し、多くの被災者を抱える被災自治体にとって、国の支援は不可欠だ。ところが、当時の熱気と思い切った支援は次第に影をひそめ、ことあるごとに見直しを迫られる姿を何度も見聞きしてきた。時間が経過して見直すことのできる支援もあれば、時の経過に関係なく必要な支援もあるのだが。

東日本大震災での気仙沼市の人的被害は 1357人(内訳:直接死1034人、関連死109人、行方不明者214人)。人口は平成22年(2010年)国勢調査で7万3489名。令和2年(2020年)1月末日の住民基本台帳人口は6万2520人なので、10年で15%の人口減少だ。災害は地域のトレンドを加速するというが、このデータを見ると実感する。そして、これほどの人口減少率を見ると、被災地への支援が十分だったとは言えないのではないか。

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