■ドキュメントベースの対策

(1)通勤マップの作成

社員の通勤マップはある程度幅広く(写真:写真AC)

通勤マップは「誰が」「どこから」「どのような手段で」通勤しているかを視覚的に表したマップである。全社員を調査して書き込む必要はないが、緊急事態が発生したときや、復旧活動にあたる中核メンバーとその代替候補となり得るメンバーを特定するために、ある程度幅広く網羅しておくことがコツである。

プライバシーの心配をする社員がいる場合は、調査主体となる担当者が、マップを作成する目的と用途、管理方法をきちんと明示して理解を得ることが大切である。

(2)スキルリストの作成

次に重要なのはスキルリストの作成である。スキルリストは、防災や災害復旧の手順を立案する際に、例えば「Aさんが出社できない場合、Aさんと同等の知識やスキルを持つ他の人員はいるのか」「いるとすれば誰なのか」を一目で特定できるように作成するものである。

スキルリストを使用する場面は2回ある。まずBCPを策定する際に、前もって代替要員の候補者を決め、これを文書に規定する場合である。もう1回は、実際に会社が被災し、予定していたスタッフが出社できなくなったときに、このリストを見て臨機応変にメンバーを割り当てる場合である。

(3)進捗管理と引継マニュアルの整備

進捗管理と引継マニュアルの整備は、災害対応というよりも、日常の業務管理の延長としての手段といえる。

日常の業務管理の延長としてマニュアル類の整備も(写真:写真AC)

各社員の業務の進捗状況については、紙による日報のほか、電子メールで上司に報告したり、社内で閲覧できるよう社内LANなどにアップしたりしていると思われる。災害時には停電やサーバー、パソコン等の故障が生じる可能性が高いので、紙に出力するか、外部のサーバーを経由して別の場所からでも閲覧できるようにしておくことで、発災時に中断した業務の状況をある程度把握できる。

また、引継マニュアルは、第三者でも容易に内容がくみ取れるように、できる限りわかりやすく記述しておくことが大切である。