「クライシスコミュニケーション」は危機の影響を最小に食い止め風評被害を回避するために行う情報開示活動(写真:写真AC)

■危機管理を見据えた2つのコミュニケーション形態

危機管理のための戦略的なコミュニケーションには、事前と事後を目的とした2種類の形態がある。「リスクコミュニケーション」と「クライシスコミュニケーション」である。

例えば自治体がゴミ処分場などをつくる場合、事前に周辺住民にその影響を説明して理解を得るために行うのが「リスクコミュニケーション」である。

一方、自然災害や事故、不祥事といった非常事態の発生によって企業が危機的状況に直面した場合、自社および利害関係者への影響を最小限にとどめるために行う、情報開示を基本としたコミュニケーションが後者の「クライシスコミュニケーション」だ。

日本語では「危機管理広報」と訳されることも多く、報道記者を前に会社の経営陣が適切に対処できるように準備する防御的な活動というイメージもある。しかしBCP的には、会社の顧客や得意先その他、主要取引先などへの事業停止の影響を軽減し、自社の風評被害を回避するための情報開示活動を指すものである。

BCP的なクライシスコミュニケーションの効果と進め方について述べたい。

■クライシスコミュニケーションの効果

BCPにおけるクライシスコミュニケーションの効果は、とても分かりやすい。次の2例はこれまでもたびたび取り上げてきた熊本地震の事例だが、効果がはっきりしている点で、いくら強調してもし過ぎることはない。

(1)情報公開による混乱の回避
金庫や図書館の書架などを製造する会社が熊本地震で深刻な被害を受け、生産を停止した。県外のメーカーに部分加工や塗装を依頼し、社員が設計図を手に出向き、代替生産を行う。この間、同社はホームページを通じて被害状況や復旧情報を積極的に発信し続けた。

当初社員たちは「そんな情報を外に発信すれば顧客の信頼を損ねるのではないか」と心配したが、結果的にはプラスに働いた。「受けたダメージは大きかったが、積極的な情報発信が会社の信頼を守ってくれた」と社長は述べている。

積極的な情報発信にはプラス効果がある

このほかにも、今では多くの工場(大企業から中堅企業が多い)が災害直後から自社ホームページで被災状況や復旧のめどを発表し、随時更新している。こうした情報をもとに新聞社はすばやく記事を掲載でき、顧客・取引先は生産や在庫の調整が行えるようになっている。

(2)風評被害の封じ込め
熊本地震が起こった時、隣接する由布院温泉街の被害は軽微だったが、問題は風評被害で客足が途絶えたことだった。なかには予約を99%失ったホテルもあったという。

由布院のコミュニティーはこの事態を深刻に受け止め、風評被害対策に乗り出した。SNS(フェイスブック)を通じて多くの情報を発信し、由布院駅や地元放送局も情報発信をサポートしたのである。

これは観光業に限らず、すべての業種に通用する戦術ではないだろうか。例えばあなたの住む地域で大地震が起こる。この時、あなたの会社が被害を免れたとしても、顧客や取引先はあなたの会社への注文を差し控えるかもしれない。そんな時、積極的にSNSやHPから「当社は通常通り営業しています!」と発信すれば、顧客の勘違いやネガティブな印象を払しょくできるに違いない。

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