大都市では災害時に帰宅困難者が大量に発生する(写真:写真AC)

■帰宅困難者発生時のさまざまな問題

大災害が発生すると、多くの公共交通機関が緊急点検のために直ちに運休し、信号機の停止や道路の寸断などで通れなくなる。こうした事態によって帰宅困難に陥った人々は「帰宅困難者」「帰宅難民」と呼ばれている。

大都市になればなるほど帰宅困難者は大量に発生し、さまざまな問題を引き起こすことが東日本大震災で明らかとなった。その後の大阪北部地震や頻発する台風でも、規模の大小はともかく、毎度のことのように発生している。以下は東日本大震災時の東京の様子である。

街中や道路の大混雑
まず、街中や主要道路での大混雑。地震発生当日の夕方から、家族の安否を心配する社員は自発的に帰宅の途につき、社内に非常時備蓄(食料や仮眠用の毛布など)のない企業は社員に帰宅を促すかたちで膨大な数の人々が街に放出された。

空になったコンビニの棚(写真:写真AC)

また、コンビニエンスストアなどでは食料の枯渇も起こる。地震発生当日、会社に1晩泊まり込むことを決めた人も少なくない。会社が食料を備蓄していなければコンビニなどで調達するしかないが、人が殺到してすぐに弁当やおにぎり、パン類は底をついてしまった。たまたま営業を続けていた居酒屋やファーストフード店などに駆け込んで難を逃れた人もいる。

バス・タクシーの大行列
そしてバス・タクシーの大行列。鉄道の運休で帰宅できない遠距離通勤者が、代替交通手段として選んだのがバスやタクシーだ。しかし、大行列で乗車できない、乗車できても大渋滞で目的地に到着する時間がまったく読めない、という状況が続いた。

災害時の大混雑(写真:写真AC)

主要道路の交通規制のため大量の車が生活道路に流れ込み、混乱をきたした。道迷いや部外者の立入りも発生する。日が暮れてからなじみのない街や通りを歩いたため道に迷った人、寒さと疲労のため最寄りのビルに立ち入って休憩する人など、災害時特有の難民的行動があちこちで見られた。