2020/04/27
医師が語る感染症への知識のワクチン
診断
鼻腔洗浄液、咽頭拭い液などからマイコプラズマを分離することで診断しますが、近年、迅速診断としてLAMP法(PCR法と同じ遺伝子検査)や抗原測定法が開発されてきており、より迅速な診断が可能になってきています。
しかし、必ずしも100%の診断率ではありません。また抗体測定による検査法もありますが、確定診断にはまだ精度が今ひとつとされています。ただ血清IgG抗体を急性期と回復期のペアで測定し4倍以上の増加があれば、確定診断になるとされています。
感染力と感染経路

感染力はそれほど強くないといわれていますが、濃厚接触により、罹患している人からの飛沫感染で感染します。家族内や同じ施設の中での濃厚接触により地域的な流行をみることがありますが、地域での感染拡大の速度は遅く、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くないと言われています。潜伏期間は2~3週間です。
気道粘液への病原体の排出は初発症状発現前の2~8日から見られ、臨床的な症状が出現する頃ピークになり、1週間程度は高レベルが続きます。そしてその後4~6週間ほど病原体の排出が続くとされています。

2.予防
ワクチンはありませんので、予防は手洗い・うがいなど一般的な予防方法です。患者との接触を避けることも大切です。
3.感染した場合の対策・治療
マイコプラズマ感染症は抗菌薬による治療が有効です。特にマクロライド系の抗菌薬が第一選択薬となります。ただし2000年頃からマクロライド系抗菌薬に耐性を示すマイコプラズマが出現してきていて、最近では40~80%がマクロライド耐性であるともいわれています。
またマクロライド系の抗菌薬にはテオフィリン、カルバマゼピン、ワーファリン、シクロスポリンなどの薬剤との相互作用があるので、使用に際して注意が必要です。その他テトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤も効果がありますが、患者の年齢や病状によって使い分けを要します。
なお、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬は効果がありません。投与法は軽症では経口投与、重症例では静脈内投与を行うことが多いですが、投与期間は臨床的な症状が改善しても再燃予防のために7日間から10日間継続することが望ましいといわれています。
学校保健安全法での出席停止期間は明確に定められてはいませんが、病状により、学校医その他の医師において感染の恐れがないと認められるまで出席停止の措置が必要と考えられています。
医師が語る感染症への知識のワクチンの他の記事
- 【最終回】食中毒への備え
- マイコプラズマ感染症への備え
- 溶連菌感染症への備え
- ノロウイルス感染症への備え
- インフル、予防の基本は手洗いとうがい
おすすめ記事
-
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方