同社危機管理室の後藤大輔室長は「共有する方針は、『人命第一』、『ステークホルダーとの信頼関係』、『地域社会との共助』の3つ。グループ会社にはこの方針を基にBCPを策定してもらっている」と話す。

多種多様な訓練を実施 
鈴与グループでは、安否確認から、避難訓練、図上演習など多くのBCP訓練を定期的に実施している。 まず安否確認訓練については、グループ会社各社で、定期的に2カ月に1度、安否確認システムを利用して実施している。これだけ頻繁に実施するのは、返信に慣れる事と習慣づけるためだという。後藤室長は「定期的に実施することで、最近では訓練開始から数時間以内にほぼ100%に近い返信率となるなど、着実に訓練の成果が表れている」と話す。また訓練は、(災害用伝言ダイヤル)171の体験利用日である毎月1日に合わせて行われるため、必ず家族の安否も確認するように指導している。 

同様に、情報交換に必要な通信機器の操作に慣れるという目的で、MCA無線や衛星電話を使用した通信訓練も実施している。この通信訓練は、有事の際に実際に鈴与グループ対策本部で勤務する鈴与株式会社本社の対策本部要員と、現地関連会社の各拠点の従業員が、無線で交話をするものである。東日本大震災では、衛星電話を装備していたものの、使い方が分からなかったという事例が報告されている。鈴与グループでは、非常時にグループ全体で情報の連携が確実にとれるように訓練で徹底している。 

災害図上訓練のDIG (Disaster Imagination Game)については、各関連会社の支店長会議などの時間を活用し、本社だけでなく各社の管理職も含めて実施している。具体的には「例えば、3つの支店から社員が集まっていた場合、地域別の想定と地図を用意し、自分たちの会社ではどの場所、地域が危険なのか地図上に記入してもらう。これにより災害の状況を可視化して、避難経路や避難場所などが、参加者の間で共有することができ、対策を考えることができる」と後藤室長は話す。 鈴与の図上訓練のもう1つの取り組みとして、イメージトレーニングがある。この演習では、できるだけ簡単な想定しか参加者に提供しないことが特徴となる。例えば「地面に立っていられないほどの大きな地震が発生した」という想定の場合、参加者は何をすればいいのか、気がついたことを紙に書いてもらう。余震があるのか、津波があるのか、2次的な状況付与はあえてせず、情報が無い中、人に指示されなくても従業員1人ひとりが自分で行動できるようにすることを目的としている。 

最後に避難訓練では、社員だけの訓練に留まらず、近隣の住民にも参加をしてもらっている。清水港の近くに位置する本社建物は、海から近いため、津波避難の際に住民にも避難場所として利用してもらうためだ。訓練には、常時数十人ほどの住民が参加している。 

こうした取り組みが、地域住民からの信頼を作りだしている。

グループを利用した備蓄体制 
備蓄体制にも力を入れている。鈴与グループでは、食品事業の強みを生かし、グループ全社に従業員3日分の食料、水などを備蓄。消費期限についてもグループ会社である鈴与マテリアル株式会社が管理し、各企業に備蓄交換の時期の連絡をする仕組みを整えている。 

電源確保については、停電を想定し、ディーゼル発電機、ソーラーやプロパンガスを利用した燃料電池など2重3重のバックアップ体制を完備している。

また、燃料についてはエネルギー関連会社を持つことから、災害時でも給油可能な「災害対応型給油所」を展開するほか、電気自動車など次世代自動車の本格普及を見据え、給電設備を一部SS(サービスステーション)で配置している。さらに重機やトラックなどについてはできるだけこまめに燃料を入れるようにしているという徹底ぶりだ。