2020/07/13
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
線状降水帯を監視する5つのステップ
危険なタイプの線状降水帯が現れていないかを把握するため、実際に大雨が降る場面では次の五つのステップで確認してみてください。
1. 気象レーダーを開きライン状の雨雲が形成されていないかを見る
大雨が降ると予測されている際には気象レーダーを開き、雨雲の形を見逃さないようにしましょう。発達した雨雲がライン状に連なって見える場合には「線状降水帯かもしれない」と判断します。線状降水帯の横幅は細い場合もあれば帯状に広がりを見せている場合もあります。
2. レーダーで雨雲を見るときには広く見る
レーダーを使って確認するときのコツですが、ピンポイントの情報が必要だからといって自治体レベルまで拡大して見るのは避けてください。線状降水帯の様子やその動きを確認するのが目的の場合には、少なくとも都道府県レベル、もしくは複数の都道府県をまたぐようなレベルに調整して確認していきます。海の上で雲が発生しているような場合は、海上も含めて見るようにします。そうすることで雨雲全体の動きが把握しやすくなります。
3. 過去に遡って現在までの雨雲の動きを見る
レーダーを開き、適切な広がりに設定できたら、過去から今までの様子を見てみましょう。レーダーを開いた時点の雨雲の様子だけでは、ライン状の雨雲がどちら方向にどの程度のスピードで進んでいるのか見分けることができません。1〜3時間程度前にさかのぼってコマ送りで現在までの様子を確認することで、どの地点が影響を受けているか、全体の位置はどう移動しているか、ライン状の雨雲は発達しているか(または衰退しているか)などを見ていきましょう。
ちなみに線状降水帯の中には、時間を追うごとに全体的な位置が少しずつ変化するケースもあります。下図の場合、ライン状の通り道になっているA地点が最初に影響を受けますが、雨雲全体が次第に南に動くことにより、それまでは影響の少なかったB地点で大雨になります。過去からの雨雲の動きを見て、もし近づいてくるようであれば危険が迫っていると判断しましょう。

4. ライン状の雨雲の直下では1時間に何ミリ程度降るか把握する
レーダーで雨雲の動きを確認したら、次は線状降水帯がかかっている場所の10分間雨量や1時間雨量を確認します。10分間雨量は6倍することで時間何ミリ程度の雨になりそうかを推し量ることができます(下図参照)。10分間で15ミリを超えるような雨が継続する場合は1時間雨量で90ミリを超えてきますので、記録的短時間大雨情報の発表に結びつくような事態が起こっていると認識できます。

気象庁の「雨雲の動き」
・広域からピンポイントまで任意の広がりで雨雲の確認が可能です
・過去3時間前から1時間後までの雨雲の動きが把握できます
・アメダスによる10分間雨量の観測値も画面上に表示させることができます
https://www.jma.go.jp/jp/highresorad/
5. 線状降水帯による影響継続時間を確認する
気象庁の「雨雲の動き」では、1時間先までの雨雲の動きに関する予測が提供されます。同じような状態が1時間以内に終わりそうなのか、それともさらに続くことが見込まれるのかを見てみましょう。気象庁の「今後の雨」というツールでは15時間先までの降水量分布の予測も確認することができるので、そちらも併用します。ただし、あまり先の時間のことを調べても実際には予測通りにならない可能性があります。
気象庁の「今後の雨」
https://www.jma.go.jp/jp/kaikotan/index.html
目先1、2時間程度という短い時間帯であれば、レーダーなどを使って把握した線状降水帯の動き方や雨量がそのまま持続すると仮定して予測する方法が取れます。今後も影響が長引きそうな場合、1時間雨量の見積もりと継続時間の見込みを掛け合わせ、この先見込まれる大まかな雨量を把握して危機対応の判断に生かしていきましょう(例:「時間90ミリクラスの雨が2時間程度継続することでこの後200ミリ前後の雨となりそうだ」など)。
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方