2020/07/13
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
線状降水帯で特に危ないケースと影響が少ないケース
線状降水帯によって河川の洪水や土砂災害などが発生する危険性がある場所は、ライン状になっている雨雲の通り道に当たる場合や、同じところにかかり続けているように見える場合です。逆に影響が少ないケースはライン状の雨雲の位置が時間の経過とともに大きく動いていく場合です。少し詳しく見ていきます。
1)ライン状の雨雲の通り道に位置しているケース
イメージで把握するため、下の図をご覧ください。赤色で示した部分は、活発な雨雲がライン状に連なった部分を表しています。赤色部分の中にある矢印は、帯状に連なった個別の雨雲や雨雲全体が進む方向を示します。
この場合、雨雲が向かう方向はA地点にちょうど向かっていく形です(図の上部)。時間が経過する様子をグラデーションで表現していますが(図の下部)、ライン状の雨雲の連なりが進む方向の下にA地点があるため、大雨が非常に長い間続く恐れが見て取れます。一方、B地点は今のところ、線状降水帯のラインから離れているのでA地点に比べて雨量が少なくなる可能性があります。
2)同じところにライン状の雨雲がかかり続けるケース
線状降水帯の中には見かけ上、一つのところでほとんど動かないように見えるものもあります。図1で取り上げた広島の事例が、まさにこのケースに該当します。再度図1を確認いただくと、1時間経っても2時間経っても同じような場所で同じような降雨が続いていることが見て取れます。下のイメージ図で言えば最も危険なのは、ライン状の雨雲の直下に当たるC地点です。
3)ライン状の雨雲が足早に移動するケース
同じライン状の雨雲でも、下の図のように雨が降る場所が足早に動く場合があります。こうした形の線状降水帯では、C地点やE地点で一時的にザーッとした降水となっても短時間のうちに雨が上がるため、停滞するタイプの線状降水帯ほどの被害は一般的には発生しません。
ここまで三つのパターンを見てきましたが、「一つの場所から見て、継続的に雨雲がかかり続ける形がとにかく危険だ」と覚えておいてください(1と2が該当)。
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識の他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方