2014/01/25
誌面情報 vol41
訓練に対する意識の改善
訓練に関して論じる前に、まずは訓練の意義を明確に認識してもらいたい。
わが国では危機管理の計画や体制の整備まではしっかりと行われるが、その後の運用や改善、いわゆるマネジメントがうまくない。前述したように訓練はいわばマネジメントのための根幹技術であるにもかかわらず、訓練に対する関係者の理解と技術が追いついていない状況にある。訓練を実施しない、あるいは実施できない理由として筆者がよく耳にするのは例えば以下である。
・日々の業務に追われていて時間がない。準備するための人手や技術もない
・そろそろ必要だと考えている(という言い訳を毎年繰り返す)
・組織の幹部の時間を確保できない。恥をかかせるわけにもいかない
・日々の業務こそが危機対応の連続。実践を経験しているから訓練は不要
・危機対応は応用力の勝負。机上で物事を検討しても意味がない 等
これらはすべて言い訳である。危機管理を担う組織であれば、訓練は当然実施しなければならないものである。そのうえで、投入できる人員・時間・資金等に制約があるのであれば、可能な範囲で実施できる訓練方法を模索するのである。また、実践性こそが重要と主張するのであれば、実践的な訓練を実施すればよい。
いずれにせよ、危機管理は日頃のマネジメントこそが重要であり、PDCAサイクルにより継続的にマネジメントしていくことではじめて実効を得るのである。まずは訓練に対する意識を改めてほしい。
従前訓練の課題
従前の訓練にも課題は多く、次のような課題が挙げられる。
例えば、組織の幹部を巻き込む場合に失敗を嫌う傾向にある。失敗を嫌うことにより、訓練しやすいという観点の設計になる。また、シナリオやスケジュールが事前に周知される形となり実践性が失われる。検証の視点としても、定められた対応を間違いなく実施することに主眼が置かれる。
また、目的・目標・評価基準が曖昧のまま実施されることも多い。その結果、訓練評価や課題抽出が効果的に実施されず、訓練の効果が上がらない。
さらに、訓練の前提となる活動整理ができていない状態で訓練を実施している例もよく目にする。関係機関の間での権限と分担が確立していないケース、判断のための活動や情報が十分に整理されていないケース、個々の基本行動ができていないケース等、様々な状況があり得るが、これらが事前に整理されていなければ、訓練時の行動目標が設定できず、成功・失敗の判断基準を得られない。その結果として、訓練の効果が薄れてしまう。
一点目の課題は訓練に対する意識の問題であり、二点目、三点目は技術的な課題である。効果的な訓練を設計し実施する上では、これらの課題をクリアしておかなければならない。
新型インフルエンザ対策訓練メニュー
訓練で検証すべき要素という観点から、新型インフルエンザ対策訓練のメニューには例えば表に示すようなものがある。

これらはあくまで一例であり、実際には自治体、企業、さらには組織内各部のそれぞれの役割や機能に応じた個々の様々な検証要素がある。また、訓練形式については、単純化のため、「実動訓練」(実際の対応を行うロールプレイ型の訓練、体を動かすタイプの訓練)と「机上訓練」(特定課題について机上で検討する訓練、頭を動かすタイプの訓練)の2種類に区分して記載した。また、ここでは感染予防の基礎知識等の個人向け教育として実施すべき内容は省略している。なお、新型インフルエンザ対応の総合訓練を実施している自治体もあるが、基本的には本表に示した検証要素の組み合わせとして実施しているところが多い。
A/H1N1の対応の教訓等を踏まえ、今後の新型インフルエンザ対策訓練で考慮しておきたい危機管理のポイントを挙げる。危機管理のポイントは訓練における検証のポイントでもある。
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