会社役員賠償責任保険(D&O)

D&O保険は多くの方にとって比較的なじみのある保険だと思います。フィナンシャルラインのなかでは古参の商品といえるでしょう。

D&O保険は、会社役員の業務遂行に起因して発生した賠償責任を補償するものです。会社役員の義務は会社法に規定されており、これに反する行為を行ったことにより役員個人は損害賠償を受けることになります。

善管注意義務を怠ったために会社に損害を与えた場合には、会社あるいは株主から訴えられます。また、リストラを行った際に不当解雇だとして元従業員から訴えられることもあります。D&O保険は会社ではなく、役員個人を守る保険なのです。

日本国内でも、D&O保険は随分と一般的になってきましたが、海外子会社の役員がきちんと補償されている保険内容になっているかどうか、検証が必要です。例えば、海外の現地法人社長として送り込まれた日本では部長待遇の社員が、現地でハラスメントの責任を追及された場合、自社で契約しているD&O保険で補償されるか、確認すべきです。

他国のグローバル企業との競争に勝ち抜いていくためには、積極的にリスクを取って経営をしていく必要がありますが、日本の経営層はどちらかというと保守的です。経済産業省は、これを改善していくための一つの方策としてD&O保険を欧米企業並みの補償に拡充して、経営層がリスクを取れる環境作りを後押ししています。

一般的に日本の企業が加入しているD&O保険、すなわち日本の保険会社が提供しているD&O保険の内容が海外の保険会社のD&O保険に比較して劣後している点を憂慮してのことです。

経済産業省からは、以下の7つがD&O保険の実務的検討ポイントとして挙げられています。

1. 填補限度額の追加
2. 告知と免責事由の分離
3. 争訟費用の前払い規定
4. 会社が損害賠償請求した場合の補償
5. 保険契約終了後の補償の継続
6. 退任役員の補償
7. 組織再編に伴う補償の継続

参考までに経済産業省のホームページのリンクを添付しますので、自社のD&O保険が上記7つの検討ポイントを満たしているかをぜひ確認しましょう。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/150724_corp_gov_sys_3.pdf

また、保険契約内容の検証は契約している保険会社に問い合わせるのではなく、中立的なウイリス・タワーズワトソンのような保険の専門家に相談することをお勧めします。十分なD&O保険に加入することによって経営層が積極的にリスクを取ることが、企業の成長につながっていくのです。