さまざまな気候変動リスクを分類し、シナリオに応じてアプローチ(写真:写真AC)

■BCP的リスクアセスメントのアプローチは使えない?

前回は「気候変動対策にはこれまでのBCPの枠組みの中で進めることのできる側面と、従来のやり方では対応できない側面がある」と述べました。地震、水害のように経験や教訓が生かせるものと、熱波や海面上昇のようにこれまでの経験が生かせないものがあるということです(かといって、こうした危機事象が起こってから対処したのでは手遅れですが)。

TCFDの提言(最終報告書)
https://tcfd-consortium.jp/

リスクを捉えるためには「リスクアセスメント」を行うことがこの分野では基本となっていますが、単に従来のBCP策定ステップの一環としてのリスクアセスメントを行うだけでは十分ではありません。そこで有力な参考情報として、気候変動のリスクの捉え方についてTCFDの最終提言(2017年6月発行)をもとに考えてみましょう。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は「気候関連財務情報開示タスクフォース」の略称です。気候変動によって事業が受けるであろうさまざまな影響にフォーカスし、企業が気候変動によるリスクやビジネス機会などを検討し、投資家等に開示するためのフレームワークを示したものです。この情報開示の主な要素は次の4つです。

ガバナンス気候関連リスク及び機会に関する当該組織のガバナンス
戦略当該組織のビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の潜在的影響
リスクマネジメント当該組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス
指標と目標気候関連リスク及び機会を評価・管理するために使用する指標と目標

2019年には各省庁のサポートのもと、企業の情報開示やその情報を金融機関等の投資判断に役立てる取り組みなどを話し合うTCFDコンソーシアムが設立されたこともあり、国内のTCFDへの賛同を表明する企業も増えているといいます。