第129回:COVID-19パンデミックに対してBCMがどのように役立ったか
Controllit / Effectiveness on BCM: During the COVID-19 Pandemic
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
田代 邦幸 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
ドイツに本拠地を置くControllit 社(注1)は、欧州を中心とした企業を対象として、新型コロナウイルス対応における事業継続マネジメント(BCM)や危機管理などの有効性に関するアンケート調査を実施し、その結果を2020年9月に発表した。
回答総数は104で、そのうちの6割強はドイツの企業からのものである。残りの4割については具体的な回答数が明記されていないが、ドイツ以外の18カ国(注2)から38件の回答が得られたとのことである。
なお回答者が属する業種は、40%が金融・保険、15%がIT・通信、12%が運輸・交通などとなっているので、本報告書を読む際にはこのような業種の偏りがあることを念頭に置いておく必要がある。例えば「パンデミックによって損害がありましたか?」という設問に対して「Yes」と回答したのは40%にとどまっている。この点について本報告書では、パンデミックによる影響が大きかったと思われる旅行業、小売業、ヘルスケアなどの業種が回答者の中で少数であり、銀行や保険会社における損失は比較的小さかったと思われるためだと指摘されている。
図1は回答者の企業におけるBCMの成熟度(maturity)を5段階で尋ねた結果である。ここで「Established」や「Advanced」は次のように定義されて回答者に示されている。
Established:
BCMのポリシーやプログラム、およびプロセスが経営層に承認されており、一部の部門では事業影響度分析(BIA)やBCPの見直し(review)が実施されている。
Advanced:
BCMに関して、全ての部門において計測可能な高レベルの力量(competence)を有する。事業継続戦略が決められて責任者に承認されており、関連する全てのシナリオに対してテストされている。
合計すると回答者の75%が自社のBCMの成熟度を「Established」以上であると評価しており、全体的にBCMの運用が進んでいることがうかがえる。ちなみに別の設問における回答では、回答者の67%が定期的にテストや演習を実施しており、実施されているテストや演習の種類については「机上演習」(Desktop Exercise)が64%、「機能テスト」(Functional Exercise)が58%、「シミュレーション」(Simulation)が52%、などとなっている(複数回答)。