2014/11/25
誌面情報 vol46
首都直下地震「新」想定

首都直下地震の被害対策を検討してきた中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループは2013年12月、30年以内に70%の確率で起きるとされるマグニチュード(M)7級の地震で、最悪の場合、死者が2万3000人、経済被害が約95兆円に上るとの想定を発表した。一方、これまで蓋然性が高い最悪の被害想定とされてきた東京湾北部地震は当面起きる可能が低いとして対象外とされた。被害想定の作成に協力した株式会社三菱総研主席研究員の堤一憲氏に、8年ぶりに見直された首都直下地震の「新」被害想定について解説いただくとともに、同社主任研究員の石井和氏に、企業や自治体に求められる対策改善点について説明していただいた(7月23日、都内で開催した首都直下地震「新」被害想定解説セミナーより)。

関東南部ならどこでも起こる
三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 主席研究員
堤一憲氏
南海トラフ巨大地震の被害想定は最大クラスの被害を算出しましたが、首都直下地震の被害想定に用いた地震はM7クラスです。その理由は、南海トラフ巨大地震は周期性が不確かなので最悪のケースを想定したのに対し、関東南部は過去最大震度の元禄関東地震タイプが2000~3000年間隔、M8クラスの大正関東地震タイプは200~400年間隔で起き、これらの地震の発生確率が現在は非常に低いために、20年に一度ぐらいの高頻度で起きているM7クラスの地震を対象にしました。
具体的な被害想定を導き出すために選んだのが都心南部直下地震です。注意して欲しいのは関東南部地域ではM7クラスの地震はどこでも起こりえる点です。
都心南部直下地震は首都中枢に最も影響があると想定されることから、たまたま選んだにすぎません。ですから、次に必ずこの地震が起きるわけではありません。別の地点で地震が起こると、当然、地域よって被害規模が変わります。


誌面情報 vol46の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
柔軟性と合理性で守る職場ハイブリッド勤務時代の“リアル”な改善
比較サイトの先駆けである「価格.com」やユーザー評価を重視した飲食店検索サイトの「食べログ」を運営し、現在は20を超えるサービスを提供するカカクコム(東京都渋谷区、村上敦浩代表取締役社長)。同社は新型コロナウイルス流行による出社率の低下をきっかけに、発災時に機能する防災体制に向けて改善に取り組んだ。誰が出社しているかわからない状況に対応するため、柔軟な組織づくりやマルチタスク化によるリスク分散など効果を重視した防災対策を進めている。
2025/06/20
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方