トナー切れよりもっと焦る事態に備える必要があります(出典:写真AC)

■どんな会社にも起こり得ること

こんな経験はありませんか? ある日、急ぎの重要書類を印刷しようとしたら、トナー切れのメッセージが出て印刷できなくなってしまった。あいにく今日は金曜日だから、今日トナーを注文しても届くのは月曜日以降だ。どうしよう…!

このような場合、経験豊富な人なら何かの裏技で急場をしのぐかもしれません。しかし一般的には、重要書類を印刷・配布できないために提出先の相手に迷惑がかかり、さらには予定されているその後の段取りなどにも影響が出るのは必至。手をこまねいて見ているほかはないと思うでしょう。

トナー切れ一つでこんな状況ですから、何かのアクシデントや災害が発生し、会社にとって重要な資源―例えば原材料や部品、商品、製品など―が欠品したり調達できなくなったりしては一大事です。そこでBCP(事業継続計画)では、こうした緊急事態に備え、あらかじめ「代替調達先」を確保することを奨励しているわけです。

ところがここに一つのハードルが。代替調達先としてどのメーカーと手を結ぶのがベストなのかという問題が生じます。品質、仕様、価格だけでなく、災害に強い企業文化を持っているかといった点も考慮する必要があるでしょう。複数の候補先の中から最適な1社を選ぶことになるわけですが、これが一筋縄ではいかないのです。かと言って「まあ、そのうち時間のある時に…」などと先送りしていたら、永久に代替調達の候補先は見つかりません。

■防災意識の高さも選定要件に含めよう

今回のPDCA事例では、まさにこの問題に焦点を当てます。会社にとって最も重要な調達品目について、どうしたら自社の条件にマッチした候補先を選定できるか、そして理想ではなく現実的な発注先として契約を結ぶことができるかを解決するものです。次の例をご覧ください。

【事例】製品Xの仕入れ先は河川氾濫危険域内にあるが、同社の防災意識はあまり高くなく、BCPも策定していない。豪雨災害や地震が多発している今日、もし仕入先の被災によって製品Xの調達が困難になれば、当社の生産がストップしてしまうリスクがある。よって製品Xの代替仕入れ先を探す必要がある。

まず「Planの」ステップについて。新規に調達先を開拓するわけですから、ここでは「なぜ分析」(5つのWhy分析)は使いません。しかし目標とするところと、その目標を達成するための要件は上記の事例の文面から明らかです。

目標は防災上より安全な代替仕入れ先を確保すること。その選定活動に当たってはいつまでに達成するのか期限を設ける必要があるでしょう。候補先は「製品X」と同等の製品を扱っている(製造している)会社であることが必須ですから、仕様や価格面で自社の条件と折り合わなければなりません。これらに災害への対応能力を加味すると、次のようになります。

・目標:製品Xの代替仕入先を3か月以内に探し、契約を交わすこと。
・選定条件1:現行の仕入れ先と同等のスペックと価格を満たせること。
・選定条件2:BCPを持っており、災害への対応ができていること。