2018/03/12
防災・危機管理ニュース

東京都は11日、女性防災人材育成の最初の講座として今年度「防災ウーマンセミナー」を新宿区の都議会議事堂にある都民ホールで開催。約200人が参加した。女性が防災リーダーになる意義や避難所、災害時の食中毒予防、帰宅困難者対策などについて説明。2011年の東日本大震災からちょうど7年の午後2時46分に黙とうも捧げられた。
冒頭、都総務局防災対策担当部長の和田慎一氏が「過去の災害において、避難所の意思決定に女性がかかわることが少なく、着替えや授乳スペース確保などの取り組みがなされなかった。防災においても女性が才能を発揮する、コーディネーターとなる人材を育成したい」とあいさつした。
「減災と男女共同参画 研修推進センター」共同代表の浅野幸子氏が避難所ではトイレなど衛生、防犯やプライバシーの問題があることを説明。これまでの避難所は地域組織の幹部や施設長など、男性になりがちだったが、問題の解決には多様な視点が必要なことから、女性や若者など様々なメンバーで運営を行っていくべきだと指摘。そうすることで女性だけでなく、障害者や子ども、外国人などのマイノリティへの配慮にもつながるとした。またトイレが使えない、家族が帰宅困難者になったなど、実際に災害時に起こりうる状況を記したワークシートを用いて、「どうすればいいのか、どう備えておくべきなのか、当事者意識を持って活動すべき」だとした。
都福祉保健局健康安全研究センター企画調整部食品医薬品情報担当課長の石井健氏は、災害時の食中毒予防について講演。避難生活では食中毒予防のため、手を清潔に保ち、できるだけ早く食べ、食べ物は十分に加熱することが重要と述べた。手洗い・手指消毒が重要で、水が使えない場合はウェットティッシュなどの利用が効果的だと説明。都がダウンロードでも提供する「避難所ですぐに使える食中毒予防ブック」の紹介も行った。
都総務局総合防災部事業調整担当課長の永井利昌氏は、帰宅困難者対策を説明。首都直下地震では都内で517万人の帰宅困難者が出る想定や、地震後に原則3日間は職場や一時滞在施設にとどまる必要があることを説明。理由として、一斉帰宅で被害拡大や二次災害の恐れがあることや、人命救助に重要な72時間の間に帰宅者が道路を塞ぐと、救助に支障をきたすためと述べた。さらに水9Lや9食分の食料、毛布など職場での備蓄や、外出時は住民向けの避難所ではなく一時滞在施設に行き、そこでは水や食料を分け合う助け合いの精神や、運営への積極的な協力が大事なことを述べた。
都の女性防災人材育成事業は2018年度から本格化。基礎編の「防災ウーマンセミナー」と応用編の「防災コーディネーター育成研修会」を実施。どちらも働く女性向けの「職場編」と専業主婦などを対象にした「地域生活編」に分けて実施する。基礎編は年4回程度を予定しており、その職場編では企業などが参加者を集め、その企業へ講師を派遣し実施することも検討している。
また、この日も出席者に配布された「女性版東京防災」こと「東京くらし防災」については、9日に小池百合子知事が記者会見で「追加の発送依頼が相次いでおり、増刷をかけている」と説明。100万部を発行し、1日から配布しているが、都総務局によると在庫が少なくなり、25万部の増刷発注をかけているという。「東京くらし防災」はアマゾンの「Kindle Store」など電子書店からもダウンロードできるほか、同じく1日にリリースされた「東京都防災アプリ」からも読むことができる。
■ニュースリリースはこちら(「東京くらし防災」の電子書店での取扱開始について)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/05/08.html
■関連記事
「女性版東京防災、美容院などで3月配布」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4593
「東京都、備えを学び災害時役立つアプリ」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4914
「東京都、避難所向け食中毒予防ブック」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/3618
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
- keyword
- 東京都
- 女性防災人材育成
- 都民ホール
- 東京くらし防災
- 防災ウーマンセミナー
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
-
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方