2016/10/23
誌面情報 vol51
一般の事業者に求められる対応
さて、一般の事業者にはどのような対応が求められるのだろうか。原則的には基本的な感染症対策を徹底することが求められる。厚生労働省から公表されている「事業者・職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン」のなかで、企業がBCP(事業継続計画)を策定する上で、以下のような被害想定を記している。
新型インフルエンザなどによる被害想定 ・医療機関で受診する患者数…1300万人〜2500万人 ・発症率…25% ・従業員の欠勤率…最大40%(ピーク時2週間の最大欠勤率。り患した従業員のほか、家族がり患したため出勤が困難になるもの、不安のため出勤しないものなど含む) ・欠勤期間…1週間〜10日程度 ・流行期間…8週間(ピークは2週間) |
すなわち事業者は、上記のようにピーク時の2週間程度、最大欠勤率40%の場合に備えて取引先や補助要員を含む運営体制について対策を講じ、パンデミック時のBCPを構築することが求められているといえる。以下、ガイドラインが挙げる業務を継続する際の感染症対策の例を挙げる(図5)。

企業はパンデミックに備えた訓練を
「現在、例えば新型インフルエンザ患者が国内で発生した場合、厚生省のガイドラインでは病院ではなく保健所へ連絡することになっているなど、平時から確認しておかなければいけない項目も多い」と平川氏は話す。
今年も、冬にかけてインフルエンザなどの感染症が流行することが予想される。毎年のインフルエンザの流行は企業としての年中行事になってしまった感はあるが、来るべきパンデミック(感染症の世界的な流行)に備えた訓練と捉えることもできる。企業はぜひ、この機会に感染症に対する正しい知識を身につけ、自然災害と同じくBCP訓練を開催してほしい。
事業者職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0730-13e.pdf
(了)
誌面情報 vol51の他の記事
- マスクの基礎知識 フィットテストを怠るな!
- うがいの基礎知識 ガラガラってする?声を出す??
- BCP担当者が最低限おさえておきたいインフルエンザ特措法
- 手洗いの基礎 アルコール洗浄だけでいいと思っていませんか?
- 講演録_01 2015年7月17日開催セミナー 想定を超えたスーパー台風に企業はどう備える?
おすすめ記事
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方