2016/10/23
誌面情報 vol51
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/670m/img_6fa8034424a45f2f176398eb55d2faf2130101.jpg)
秋から冬にかけての季節、企業のBCP(事業継続計画)にとってインフルエンザなどの感染症対策は必須となる。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年9月25日号(Vol.51)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。役職なども当時のままです(2016年10月23日)
5月に韓国で流行したMERS(中東呼吸器症候群)の例を出すまでもなく、都市部の人口一極集中や交通手段の多様化などにより、感染症は報じられてからまん延するまでの時間が非常に短期間になる可能性が高く、企業の担当者としては頭の痛い問題だろう。
もちろんマニュアルや訓練などの事前準備を講じることも必須だが、感染症対策に最も大切なことは、感染源に近寄らないこと、そして従業員のみならずその家族や企業の訪問者に対しても手洗いなどの予防策を適切に、徹底的に実施してもらうことだ。編集部独自の視点で「企業の感染症対策」について考えてみた。
コピーして貼るだけで職場でも家庭でも使える「手洗い、うがい、マスクの基礎知識」の付録付き!ここからダウンロード可能
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/b/7/670m/img_b7afc05fbe0ea88c19d6479e3f4e598512328.png)
■BCP担当者が最低限おさえておきたいインフルエンザ特措法
2013年4月から施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)。2009年4月に発生した新型インフルエンザ(H1N1)の反省を踏まえながらも、2011年3月に発生した東日本大震災の経験から「想定外のリスク」をなくすことを目的に制定された。幸いにもこれまで国内で法律が適用された事例はないが、致死率の高いH5N1亜型鳥インフルエンザの感染件数は今も増えており、依然予断を許さない状況が続いていることは間違いない。本稿ではBCP担当者が最低限おさえておきたい特措法の概要を紹介する。
インフルエンザとは?
「インフルエンザ」とは、人間がインフルエンザウイルスに感染することによって発症する病気のこと。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が現れ、風邪と同じようにのどの痛みや鼻汁、咳などの症状をもたらす。免疫力の弱い子どもや高齢者が発症した場合、肺炎などを伴い重症化することがあり、最悪の場合、死に至ることもある。インフルエンザウイルスは大きくA型、B型、C型に分かれ、このうちパンデミックの可能性があるのはA型だ。
20世紀の初頭、1919年には世界中で「スペイン・インフルエンザ」が発生し、当時の世界人口の約3割にあたる数億人が感染し、うち4000万人以上が死亡。日本でも40万人以上が亡くなったと伝えられる。その後も、1957年にはアジア・インフルエンザ(推定死亡者200万人)、1968年香港インフルエンザ(同100万人)と10年〜40年の間隔で、世界中で猛威を振るってきた。しかし、これらのインフルエンザは世界中で流行するとともに、多くの人が免疫を獲得するようになり、現在では季節性インフルエンザとして取り扱われるようになっている。
さて、このインフルエンザウイルスは、実はさまざまな生物の中に存在しており、一般的には種を超えて感染することはないが、数十年に一度は種を越えることがあるという。近年、人々を不安に陥れたのが2003年に東南アジアやエジプトを中心に発生した強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)だ。これは豚の体内に鳥インフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの両方に似ているレセプター※があるため(注:諸説あり)、まれにではあるが豚を介したり、鳥を生きたまま販売する地域などで、変異を繰り返してヒトとヒトとの間で感染する新たなウイルスに変異したものと考えられている。日本ではこれまで発症した例は確認されていないものの、アジア、中東、アフリカを中心に症例が報告されており、その感染率は低いものの、インドネシアでは199人が発症し、167人が死亡するなど死亡率は高い。
誌面情報 vol51の他の記事
- マスクの基礎知識 フィットテストを怠るな!
- うがいの基礎知識 ガラガラってする?声を出す??
- BCP担当者が最低限おさえておきたいインフルエンザ特措法
- 手洗いの基礎 アルコール洗浄だけでいいと思っていませんか?
- 講演録_01 2015年7月17日開催セミナー 想定を超えたスーパー台風に企業はどう備える?
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方