避けられない浸水はスピーディーな復旧で克服
岡山市の製造企業モリヤテクノの事例から見る事業継続

リカバリープロ
リカバリープロ株式会社は火災や水災などの被害に対応する災害復旧サービスの専門会社。40年以上の歴史を持つ世界最大級の災害復旧サービス企業であるベルフォアグループの一員で、2010年にベルフォアアジアの 100%子会社として設立された。リカバリープロの社名は復旧の専門家集団という意味を持つ。多業種のお客様に、多様な災害の復旧サービスを幅広く提供している。
2021/06/28
事例から読み解く 事業中断ロスを防ぐための災害復旧
リカバリープロ
リカバリープロ株式会社は火災や水災などの被害に対応する災害復旧サービスの専門会社。40年以上の歴史を持つ世界最大級の災害復旧サービス企業であるベルフォアグループの一員で、2010年にベルフォアアジアの 100%子会社として設立された。リカバリープロの社名は復旧の専門家集団という意味を持つ。多業種のお客様に、多様な災害の復旧サービスを幅広く提供している。
温暖な気候で知られる岡山県に2度の浸水を経験した企業がある。桃太郎の銅像で有名な岡山駅から南西に15キロメートルほど離れた岡山市の南西部に位置する株式会社モリヤテクノだ。
「1度目の苦い経験から2度目の浸水では対策がうまくいきました。事業再開までの期間を短縮でき、被害額も抑えられた」と話すのは代表取締役社長の守谷悟氏だ。
大地震を耐え抜く鋼構造物の製造や鉄鋼を曲げる加工に強みを持つ同社は、平成23年と平成30年と最近10年間で2度の浸水被害を受けた。「先代が昭和47年にこの場所に工場を建設しました。長い間、浸水を経験することはありませんでしたが、この10年で2度の浸水の被害を受けました。2度の浸水の間にも、近くにまで水が迫ってきたこともあります。岡山の気候が変わったと実感しています」
モリヤテクノに1度目の浸水被害をもたらしたのは平成23年9月の台風12号だった。この台風は岡山市で床上と床下浸水を合わせて約4600棟の被害を発生させた。「胸までつかるほどの水が本社事務所と3棟の工場を覆いました。ほとんど全ての設備や機材が水没しました」と守谷氏は語る。
同社の中核事業の一つは、独自技術である「SKシャーネット工法」を用いて鉄鋼をクロスし、強度を上げた、ゆがまない屋根の製造だ。耐震性が高いと評価され、全国各地の学校の体育館で採用されている。
1995年にマグニチュード7.3を記録した阪神淡路大震災でも、この工法を用いた野島小学校(旧兵庫県北淡町)の体育館の屋根に被害はなかったという。守谷氏は「調査した野島小学校は阪神大震災の震源地となった野島断層の目と鼻の先にあります。この体育館は1988年に建てられたものです。SKシャーネット工法の屋根は学校を中心に、全国で3000棟の建築実績があります」と胸を張る。
天井にクレーンがつるされている同社の工場には、この屋根の製造やもう一つの事業である鉄鋼を曲げる加工に必要な大型機械が並ぶ。独特なカーブを持つ鉄鋼を求める企業から持ち込まれた依頼が形づくられる場所だ。工作機は地上だけではなく地下ピットにも設置されている。平成23年9月に、この工場内にあるほとんどの設備が水につかり、泥をかぶった。
従業員総出で泥を洗い流したが、機械メーカーの修理にも時間がかかり、復旧までに少なくとも2カ月が必要だった。その後も機械に漏電がたびたび発生し、正常に稼働できず苦しめられたという。被害金額は「売り上げベースで数千万の規模になりました」と話す。そこで浸水対策の立て直しを図ったのだ。
事例から読み解く 事業中断ロスを防ぐための災害復旧の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方