この観点から事例をご紹介しますと、まず神奈川県の鎌倉市では、同市に拠点を置く面白法人カヤックが中心に手掛ける「まちの〇〇シリーズ」が展開されています。例えば「まちの社員食堂」と名付けられた取組みでは、鎌倉市内の50のお店が、市内で働く人のために週替わりで食事を提供しています(写真)。この食堂はJR鎌倉駅のほど近くにあり、誰でも利用できるようになっていますが、会員企業(鎌倉市役所を含め20以上の市内事業者が会員になっています)には特別価格で食事が提供される仕組みです。

画像を拡大 まちの社員食堂で食事を提供する飲食店の一覧(2021年撮影)

今年1月からは、「まちのコイン」事業が鎌倉市の事業として始まっています。こちらもカヤックが手掛けるプロジェクトで、換金性のない地域通貨を専用アプリ上でやりとりする仕組みです。市内のお店でコインをもらったり使ったりすることができます。コインを使えば使うほど地域の人とのつながりをつくることができます(アプリ上でつながりが可視化されます)。まちのコインの流通量を、地域に関係する人々の仲の良さの指標として捉え、住民の中からお店のファンを増やし、ひいては市外の関係人口の創出につなげたいという狙いがあります。

鎌倉市ではこのほか、「まちの保育園」「まちの人事部」と名付けられたユニークな「まちの〇〇シリーズ」が展開されています。一見災害とは関わりの薄い取組みのように見えますが、人々のつながりやコミュニティー醸成に向けたこのような日ごろの地道な活動が、いざという時の対応に確実に効いてきます。レジリエントな街づくりの土台となるのです。

■著者からのお知らせ

『世界のSDGs都市戦略: デジタル活用による価値創造』が2021年7月25日に刊行されました。
https://www.amazon.co.jp/dp/4761527838?tag=hanmotocom-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1&language=ja_JP

レジリエンスの観点からSDGsを捉え、システム思考、デザインサイエンス、デジタル活用のキーワードから、今後の街づくりや社会デザインを考察しています。本連載でご紹介している「文脈化」の考え方、災害対応との関連についても整理していますので、ご関心のある方はお手に取ってご覧いただければ幸いです。


※(株)サイバーエージェント、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの共同研究「デジタルガバメントに関する住民ニーズ調査」。全国4,129人を対象としたオンラインアンケート調査(2021年2月実施)。デジガバニーズの高低を12の質問から抽出。デジガバニーズと「自治体との近さ」「暮らしの理想」に関する質問項目の因果関係を明らかにするため、線形回帰モデルを用いた統計的因果推論を実施。詳細は国際大学GLOCOMホームページを参照のこと。