2021/08/23
事例から読み解く 事業中断ロスを防ぐための災害復旧
工場再稼働に向けて代替拠点での生産を実施
寿高原食品の豊野工場が再稼働したのは、被災から約8カ月後の2020年の6月29日だった。山梨県産のモモを搾るところから再スタート。自社製品の販売だけではなく、サプライチェーンの一環として果汁を納める立場でもある同社は、この8カ月間の生産停止期間中は商品の代替生産を実施していた。
同社には青森県板柳町に子会社の津軽果工株式会社がある。通常は青森産のリンゴを搾っているが、長野産のリンゴを運び込んで製造を続けた。そこが代替拠点となって稼働を続けた。「被災後に県内外の同業メーカーにもお願いして搾汁してもらった。なんとか商圏を維持した」と水井社長は語る。
建設中の新たな工場での水害対策
現在、新たな工場を建設中だ。施設の老朽化もあり被災前から工場の建て替え計画は進んでいた。それをベースに水害対策を施した。中村工場長は「今回被災機械の修理費用で3分の1が人件費、3分の1が電気系統の修理、残りの3分の1が部材費。特に電気系統の制御盤の製作に費用がかかった。その対策で多くの設備を2階以上に上げた」と説明する。
電源対策に太陽光発電を配置。受電施設のキュービクルは3階に置いた。1階には製品倉庫と原料の保管から投入して搾汁をするまでの機械に限定。1階の機械の制御盤を2階に設置し、オン/オフだけを1階で選択する。搾汁後から充填・箱詰めまでの機械は2階に設置した。
「建設費用が増えるが、従業員の安全確保とサプライチェーンとして早期に復旧するべく決断した。もし、再び被災しても復旧までは半分以下の期間で再開できる見込み」と水井社長は胸を張る。
「喫煙所に懐中電灯が置かれるようになった」と、夜間の災害対策のために起こった小さな変化を水井社長はうれしそうに語る。電話で行っていた安否確認は迅速かつ確実に実施するためメールをベースに変更した。本社を含めて防災グッズの備蓄を勧めている。豊野工場の復旧に使う資機材は本社から送っていたため、軍手や長靴、ヘルメットと細かなモノから被災後すぐに必要なものはリスト化された。水井社長は話す。
「一度被災したので、優先的に復旧させるものも分かっている。BCPは策定しやすい。訓練も含めて整備していきたい」
・漏電防止のため建物や機械など、すべての電源を直ちに切ること
・排水及び表面に付着した汚泥を洗浄すること
・濡損部分を乾燥させること
・設備・機械に関しては、さび進行の抑制すること
・専門業者・メーカーによる応急処置によって被害拡大を防ぐこと
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