2つ目のセクションで筆者が特に注目したのは、事後レビューに関する調査結果である。事後レビューについて本報告書では「post-incident review」の略として「PIR」と表記されている。なお、読者の皆さまの中には「after-action review」(AAR)という用語の方がなじみがあるという方が多いかもしれないが、これらは同義と考えて差し支えない。

図1は新型コロナウイルス対応に関する事後レビューを実施したかを尋ねた結果である。回答者の45.9%が「実施した」、36.2%が「まだ実施していないが実施予定」と回答している。

画像を拡大 図1. 新型コロナウイルス対応に関する事後レビューの実施状況(出典:BCI / Crisis Management Report 2021、レイアウトを一部改変)

事後レビューの必要性や重要性については、『リスク対策.com』においても再三にわたって指摘されているので(注3)、改めて説明する必要はないと思われる。本報告書においても回答者の多くがその必要性を認識していることが分かる。

「まだ実施していないが実施予定」と回答した方々は、まだパンデミックは収束していないから事後レビューを行っていない、という認識なのかもしれない。しかしながら、回答者の45.9%は、恐らく何度めかの波を超えたタイミングでレビューを実施しており、次回以降の波に対してはレビューの結果を生かしてより良い対応ができたのではないかと考えられる。

また図2は事後レビューに誰が参加するかを尋ねた結果である。主に危機管理や事業継続の担当者(担当部門)が中心となっている様子が分かる。人事(Human resources)が参加しているという回答が多いのは、パンデミック対応に関するレビューだったからかもしれない。

画像を拡大 図2. 事後レビューの参加者(複数回答)(出典:BCI / Crisis Management Report 2021)

本報告書では、経営層(Board/senior executive team)が70.7%「しか参加してない」ことが懸念されている。回答者からのコメントとしても、経営層が事後レビューに参加しないことに対する不満が表明されているものが複数紹介されており、経営層を事後レビューに参加させることの困難さが問題視されている。

筆者が特に注目したのは、広報(Communications and/or PR)を含むという回答が66.2%あることである。これは危機管理における対外広報の必要性や、レピュテーションに対する影響の重大さが認識されていることの現れであると言えよう。