なお、図3は新型コロナウイルス対応の結果を踏まえて何らかの改善を行ったかどうかを尋ねた結果である。回答者の59.2%が、既に改善すべき課題を特定し、危機対応計画に改善結果を反映させたと回答している。

図3. 新型コロナウイルス対応の結果を踏まえて改善を行ったかどうか(出典:BCI / Crisis Management Report 2021)

「改善すべき課題は特定したがまだ反映させていない」という回答も25.1%あるので、合わせて84.3%が改善すべき課題を特定していることになる。これは前述の設問で事後レビューを実施したという回答の割合を上回っていることから、正式な事後レビューを実施していない組織においても、一定程度の改善が行われたことが伺える。

危機管理においては、経験したことのない状況や、俗に「想定外」と言われるような状況に対する対応力をも求められるので、過去の事象からいかに課題や教訓を見いだして改善につなげ、対応力を高めていけるかが非常に重要である。本報告書は、このような改善のための活動がどのように行われているかを、数字で示してくれた。本報告書はBCIおよびInternational SOS社にとって初の試みであったが、ぜひ今後も継続的に調査を実施していただきたいと思う。

注1)BCIとはThe Business Continuity Institute の略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に9000人以上の会員を擁する。https://www.thebci.org/

注2)国際規格ISO22320を和訳して制定された『JIS Q 22320:2013 社会セキュリティ―緊急事態管理―危機対応に関する要求事項』のことである。なお元の国際規格は既に改定されており、日本規格協会でもJISの改定を進めているようである。

注3)現在ウェブサイトに掲載されている記事としては次のようなものがある。

「コロナ危機への対応を通じて今、見直すべきことは何か(その1)/緊急座談会▶︎大規模・特殊災害、医療、経済、BCPの専門家が議論」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/31671(2020年5月14日掲載)

「改善につながる「検証の方法」を知っていますか?今こそ新型コロナの初動対応とBCPを振り返りましょう」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/36671(2020年7月28日掲載)

「講演録:改善につながる検証ーAfter Action Reviewーの方法」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/42448 (2020/11/20 掲載)

また紙媒体の『リスク対策.com』vol.20(2010年7月25日号)では、新型インフルエンザ(当時)への対応に関する検証を行い、記録を残すことの必要性や、その手法について、26ページにわたって特集されている。