2016/05/04
誌面情報 vol53
貞観地震と富士山の大噴火

マグニチュード9を記録した東日本大震災は、200㎞×500㎞という巨大なブロックが一瞬のうちに数十m日本列島の下で動き、それに引きずられて日本列島全体が、広いところでは数m、少ないところでも1㎝ぐらいは動いています。富士山の真下あたりでも2㎝ぐらい動いています。このような規模の地震が起こるときには、世界の過去の例からすると間違いなく震源地から1000㎞以内ぐらいのところで火山噴火が起きています。これには例外がなかったので、日本でも必ず起こると思ったのですが、実際は起きませんでした。
3.11の後、北海道から九州に至る22の火山で、それまで噴火もしていない、地震活動もなかったところで一斉に地震が起こり始めました。そのうちのいくつかは噴火するかもしれないと思ったのですが、しませんでした。噴火をしたのは桜島と新燃岳だけですが、これらは3.11前から噴火をしていたので、地震の影響とは言えません。富士山の直下で3月15日にマグニチュード6.4の地震がありましたが、これも噴火には至りませんでした。唯一3年以内に噴火したのが西之島ですが、これは東京から1000㎞、震源地から1500㎞ぐらい離れているので本当に3.11の影響かどうかというのは判断が難しいところです。ただし、2004年のスマトラの地震では、1000㎞離れた火山が数カ月後に噴火を開始し、別の震源域から200㎞しか離れていない火山が、地震から6年後に突然小さな水蒸気噴火をし、その2年後にはマグマ噴火に移り変わって、毎日火砕流を出す噴火がいまだに続いている例もあります。つまり、時期に関しては3年以内になかったから安心ということは決して言えないということだけは注意していただきたいのです。
地震に噴火が誘発されなくても火山噴火というのは起こりえます。

3.11が起きたこと自体、すでに日本列島の力が非常に怪しい状態になっていて、いつ何事が起きてもおかしくない状態かもしれないということです。このような時代は歴史上でも時々あることです。日本でも大地動乱の時代と呼ばれる時代が9世紀の後半にありました。今回の3.11の地震とほとんど同じ場所で869年に貞観地震が起きていて、規模もほとんど同じです。その18年後の887年には南海・東南海の付近で三連動の地震「仁和地震」が起きています。この時期には実は地震だけではなく、火山噴火も非常に活発だったことがわかっています。富士山が史上最大の噴火である「貞観の噴火」を起こしたのもこの時期(864年から866年)で、ほかにも神津島、伊豆大島、三宅島、新島、鳥海山など多くの火山が噴火しています。ですから今後、数十年以内に富士山を含む複数の火山で活動が活発化することは十分想定するべきです。
次の富士山爆発は大規模?
富士山の過去3200年間の噴火回数を数えてみると、全部で100回程あります。平均すると30年間に1回噴火していたことになります。実際、奈良・平安時代というのは数十年おきに噴火をしていたことが古文書でも記録されています。規模を見ると、貞観噴火が過去最大で、1707年の宝永の噴火はその半分ほどの規模だったと推測できます。それ以外は、小規模な噴火ばかりです。そして、宝永噴火を最後に今は300年以上休んでいるわけですが、統計的に考えれば、次に起こる噴火は小規模噴火である確率が高いことは推測できます。ただし、確率が高いことが起こるわけではありません。最近200年間に世界中で富士山の宝永噴火よりも激しく大きな噴火をした例を挙げてみますと15の噴火がありますが、このうち11の火山が数百年間休んでいて噴火した火山です。数百年以上休んでいた火山が爆発的な大きな噴火を起こす可能性は高いと思います。
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