2016/05/04
誌面情報 vol53
前兆現象はいつわかる!?
火山噴火を予知するためには前兆となるような現象を捉えることが重要になるのですが、1977年の有珠山の噴火は、地震が前兆現象で31時間前です。1983年に三宅島が噴火したときには、地震が発生したと思ったら1時間半後には山が割れて真っ赤なマグマが数百m吹き上がり溶岩流が流れ出ました。ほかについても、数時間から数日ぐらいでないと前兆が現れていません。逆の言い方をすると、何カ月も前から何月何日に噴火するなんてことは決して言えません。よく週刊誌に何月何日が富士山のXデーというようなことが書かれますが、あれは肩書が立派な人であってもまったくのデタラメだと思って下さい。ただし、今は富士山は静かな状態ですが、来年の今頃、もしかしたら噴火しているということはあり得ます。
火山活動は活発になっていない

御嶽山の噴火があってから気象庁は、ホームページが見にくいという批判を受けて、書き換えました。気象庁ホームページの冒頭の1枚目のページに登山者のための火山情報というボタンを作っています。そのボタンを押すと、今どの火山で、どういう警戒レベルが出ているのか、あるいは予報が出されているのかがひと目でわかります。日本中で火山が活発化しているように見えるのか、マスコミからは頻繁に「3.11以降、火山が活発化しているでしょう?」と聞かれます。しかし、実際に活発化していることを証明することは非常に難しいことです。1年間に噴火している火山の数が増えているというのは比較的にわかりやすいですが、噴火が継続している日数で見るのか、噴火そのものの数で見るのかによっても違ってきますし、規模の小さい噴火というのは、昔でしたら数え落としているため比較できません。気象庁の場合ですと、1930年以降のデータでしたらなんとか使えますが、それ以前はダメです。
世界的にも同じで、基本的には戦後のデータでなければ使えません。実際に数えてみると15世紀ぐらいから噴火した火山の数が増えていますが、それは人口の増加率に完全に比例しています。
ちなみに、1984年以降を対象に、年間の噴火火山を数えてみると、決して増えている傾向にはなく、全体のばらつきの範囲内であることがわかります。
しかし、活発化していないといっても、我々が最近経験した噴火はごく小規模なものばかりであることを念頭に置いておく必要があります。では、もっと大きな噴火が来るだろうかというのが次の問題ですが、例えば西之島よりも規模が大きかった1990年からの雲仙普賢岳の噴火でも火砕流が5㎞、土石流が7㎞~8㎞までしか影響が及んでいません。一方、アメリカワシントン州のセントヘレンズが1980年に噴火したときは火砕流は10㎞以上までいって、火災サージと呼ばれるものが20㎞を超えるところまで行きました。雲仙普賢岳とほとんど同じ時期に噴火したフィリピンのピナツボ火山では、火砕流が20㎞まで流れ出ました。
日本でも、今からちょうど100年前、1914年に桜島の大正噴火というのがありました。溶岩流を出して、大隅半島と桜島との間の海峡を埋めてしまったために陸続きになったとされる噴火ですが、最初の日だけ爆発的な噴火をしているにもかかわらず、火山灰は桜島から発して東京にも降っていますし、仙台にも降っています。火口から40㎞離れた場所で30㎝以上の積灰があったのです。ですから、日本で大きな噴火がないということはありません。
このような大きな噴火だけを取り出してみると、各世紀に4回ないし6回はあります。ところが20世紀は1929年の北海道の駒ケ岳が最後で、それ以降大きな噴火はまったく経験していません。ですから、ここで休んだ分、これから先の21世紀などの数十年の間にいくつか大きな噴火がどこかで起こる可能性があると思った方がいいでしょう。
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