2016/05/04
誌面情報 vol53
なぜ御岳山は予知できなかった!?

噴火の兆候については、2015年5月の口永良部の噴火で、警戒レベル5になって住民が避難したことは記憶に新しいと思いますが、この時は、気象庁の地震計があったにも関わらず、噴火が始まった9時50分までは何も記録されていません。要するに予知ができなかった。山頂部には地震計がいくつも置いてありましたが、2014年8月3日の噴火で全部が動かなくなってしまいました。気象庁は近づくと危ないからといって一切修理をしないで山麓部に設置された1基を使ってモニタリングをしていたわけです。この地震計では事前の兆候である地震は観測できなかった。しかし、ある大学で無人ヘリを使って山頂に簡易型の地震計を置いて観測していたところ、山頂に置いた地震計は、数日前から山頂部だけで感じるような地震が増えていく様子が記録されていました。火口付近に観測点を置いて、しっかり観測していれば、今回のような水蒸気噴火であっても前兆を捕まえることはできるという1つの例です。

一方、2014年9月の御嶽山の噴火では、9月27日の噴火より前の9月10日、11日に山の下で50回を超えるような地震が2日間観測されました。この地震があった時になぜ噴火警戒レベルを2に引き下げて、火口周辺警報を出さなかったのかと、気象庁が責められているわけですが、彼らを弁護するわけではないですが、1つの根拠は、御嶽山では2007年に非常に小さな、山頂に行ってみたら火山灰があった程度の噴火を経験していることです。そんな小さな噴火でも、1カ月以上前に地震が増え、一旦下がってからまた地震が増えた時点で噴火が起きました。地殻変動で数㎝山も膨らんでいます。こんな小さな噴火でも地震が増えるだけでなく、山が膨らむ地殻変動を伴うと彼らは思い込んでいたので、地震が起きても、噴火警戒レベルを1のままにしていたのです。それが災害につながってしまった1つの要因です。ただ、明らかに前兆現象といえるものはありました。噴火の11分前に発生した火山性微動です。
そして7分前になって山が膨らんだことが観測点でも確認されました。このあたりで気象庁もあわてて警報を出そうとしたのですが、もう数分しか残っていないので、警報を出す前に噴火が始まってしまったということです。
誌面情報 vol53の他の記事
- 車両燃料の不足はなぜ起きた
- 特別寄稿 災害医療に必要な非日常性(上)
- 札幌に本社設立でBCMを強化
- 期待高まる災害救助犬
- 巻頭インタビュー 火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣氏
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方