2021/10/01
非IT部門も知っておきたいサイバー攻撃の最新動向と企業の経営リスク
組織がやめるべき悪い慣行
ところで、CISAとFBIによるこのアドバイザリーが公表された前日の8月30日。組織がやめるべき「悪い慣行」に関しての改訂版がCISAから公表されたので、最後に紹介したい*5。
ランサムウェア攻撃対策の推奨事項としてMFA(多要素認証)の使用について前述したが、多要素認証の「逆」である単一要素認証の使用をやめるべきということが今回の改訂版では追加された。ここでの単一要素認証とは、一般的な低セキュリティの認証方法を示しており、パスワードなどの単一の要素をユーザー名に一致させるだけでアクセスできてしまう状態を示す。
政府機関では主にこの単一要素認証を非常にリスクの高いサイバーセキュリティ慣行であるとしており、多要素認証の欠如は総合的にセキュリティレベルが低いとみなしているため、このアドバイザリーではその点を指摘している。
なお、強力な認証の実装方法については、このアドバイザリーとは別にCISAからガイドが提供されているので、そちらも参照されたい*6。
単一要素認証以外にも、既にサポートが終了したソフトウエアを使用することをやめることや、既知・固定・デフォルトのパスワードや認証情報を使用することをやめることもこのアドバイザリーでは推奨している。これらの「悪い慣行」は、全ての組織で回避する必要があり、重要インフラまたは国家の重要な機能に関連した組織では特に危険なことであるとしている。
また、このアドバイザリーは継続的に更新されており、今後の改訂で追記が想定されるものとしては、「ITネットワークとOTネットワークが混合された状態であることをやめること」「以前に侵害されたシステムをサニタイズせずに利用し続けることをやめること」「全員が管理者権限を持っていることをやめること」といった内容が検討されているところである。
これをやっておけばサイバーセキュリティは完璧だ、というような特効薬はもちろん存在しない。そのため、日々更新されていくサイバー空間における脅威に関する情報を収集し、それらへの対策・対応、そしてITを利用する全てのユーザーの認識やトレーニングなどを継続的にアップデートし続けなくてはならない。
出典
*1 https://us-cert.cisa.gov/ncas/alerts/aa21-243a
*2 https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/Insights/2021/06/crb-nl-june-adachi
*3 https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/Insights/2021/07/crb-nl-july-adachi
*4 https://www.willistowerswatson.com/ja-JP/Insights/2021/08/crb-nl-august-adachi
*5 https://www.cisa.gov/blog/2021/06/24/bad-practices
*6 https://www.cisa.gov/sites/default/files/publications/CISA_CEG_Implementing_Strong_
Authentication_508_1.pdf
本連載執筆担当:ウイリス・タワーズワトソン Cyber Security Advisor, Corporate Risk and Broking 足立 照嘉
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