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本連載の前々回(第159回)で、英国に本拠地を置く保険会社のBeazleyによる調査報告書を紹介させていただいたが(注1)、これは同社が「Risk & Resilience reports」シリーズとして行っている調査のうちの最初のレポートであった。そして、その2つ目が今回紹介する「Risk in a new world order: How can we meet clients’ changing needs?」である。

調査は前々回紹介したものと同じく2021年1月から2月にかけて、調査会社のOpinion Mattersによって実施されており、調査対象も同じく英国および米国の企業の上級管理職1000人となっているので、これらの調査は同時に行われたと思われる。

報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。なお、同一ページに2つの報告書のリンクが含まれており、今回紹介する報告書へのリンクはページの右側にある。左側のリンクは前々回紹介した報告書のものである。
https://reports.beazley.com/2021/rr/index.html
(PDF 21ページ/約 2.7 MB)

前々回紹介した報告書は、主にビジネスリーダー側の問題意識を概観した上で、保険業界として考慮すべきことがまとめられていたが、今回紹介する報告書はそれを踏まえて、保険業界に対してどのような役割が期待されているかをより深く探求する内容となっている。

図1は、どのような保険サービスが充実することが最もビジネスに役立つかを尋ねた結果である。赤色が全回答者からの回答結果、紫色は英国、水色が米国からの回答結果を表わしている。

画像を拡大 図1. どのような保険サービスが充実することが最もビジネスに役立つか(出典:Beazley / Risk in a new world order: How can we meet clients’ changing needs?)

回答結果のうち最も多いのは「業種や企業規模に合った、リスクに関するコンサルティングやアドバイザリー(助言)サービス」。2番目に「自社や事業環境に関して変動するデータに基づいて調整される保険カバー」(注2)があるが、これは報告書本文の解説によるとパラメトリック保険(注3)や、一時的または変化するリスクに対する補償の上乗せなどを指している。

これらに対して、保険の対象範囲をより拡大する選択肢が下位となっている。3番目は経済および社会的リスクをより広くカバーする保険、4番目は無形資産をカバーする保険である。特に無形資産に関しては英国と米国との間で大きく差が開いているのが興味深いが、報告書本文の中では、無形資産への投資が急速に拡大しており、世界の大企業50社の事業価値総額(約11兆米ドル)のうち約75%が無形資産から生み出されていることを指摘した上で、無形資産の重要性や、これに対して保険業界が果たすべき役割について説明されている。