2018/05/08
防災・危機管理ニュース

国土交通省は7日、南海トラフ地震を想定した訓練を実施。石井啓一大臣が本部長を務めた。2017年11月に気象庁が南海トラフ地震の新たな情報発表体制を開始してから、国交省初の大規模訓練。南海トラフ東側のM(マグニチュード)7クラスの地震発生、気象庁の臨時情報発表、西側のM9クラスの地震発生の3段階を想定して実施。石井国交相の指示や地方整備局との連絡などが行われた。
内閣府を中心とした政府の中央防災会議は2017年9月、1978年に制定された大規模地震対策特別措置法(大震法)で前提となっている地震の2~3日前の直前予知は現時点で困難と結論づけ、そのうえで南海トラフ沿いでの最初の事象後に対応する旨を決定。これを受け、気象庁も発表体制を新たにした。もし南海トラフでM7クラスの地震が発生した場合、最短2時間程度で分析した臨時情報が発表される。
今回の国交省の訓練では、南海トラフ東側である静岡県沖の遠州灘でまずM7.5の地震が発生。愛知県西部や三重県南部では震度7を観測。三重県南部では大津波警報が出され、国交省の災害対策本部と同省中部地方整備局・運輸局をテレビ電話でつなぎ、被害や職員の参集状況などの情報交換を行った。
第2段階は最初の地震の約3時間後、気象庁の臨時情報発表の30分後を想定。気象庁から震度やMのほか、この後に最大規模の地震が起こった場合には関東地方から沖縄にかけて大規模な津波が起こる可能性があることが伝えられた。国交省は地震連絡室・対策室を設置。中部以外に関東・近畿・中国・四国・九州の各地方整備局と連絡を取り合い、被害状況や水門閉鎖といった対策など各地の情報収集のほか後続の地震への注意の呼びかけも行った。

第3段階は最初の地震から31時間30分後に南海トラフ西側の和歌山県南方沖でM9.1の地震が起こったと想定。静岡県西部から宮崎県まで震度7を観測し、茨城県から沖縄県にかけて大津波警報が出されるという第1報を受けた。再び各地方整備局とテレビ電話をつなぎ、関東地整から中部地整への応援などを話し合った。
石井国交相は各段階で指示。M9地震の際は人命最優先のほか、TEC-FORCE(緊急災害派遣隊)や海上保安庁の全国からの部隊投入などを述べた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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