2021/12/15
首都直下地震への備え 課題と対策

10月7日夜に首都圏で起きた最大震度5強の地震で、東京ガスは非常体制を敷き災害対策組織を立ち上げた。主に、マイコンメーターによって自動遮断されたガスの復帰対応で終結した。揺れの検知と被害推定によって迅速にガスを止めるシステムのほか、ガス管の耐震化、液状化発生時の対応など、同社は東日本大震災以降、さまざまな地震対策を強化している。
ライフラインの強化(2) 東京ガス
東京ガスは1835年に渋沢栄一が創業し、1都6県、約1200万件にガスを供給する日本最大の都市ガス事業社。都市ガスの国内販売シェアは約35%で、売上高は約1.8兆円。電気小売事業の自由化にともない電力小売事業にも力を注ぐ。現在では271.7万件に電力を供給し、新規参入組でのシェアはNo.1。2020 年、BCPに風水害編が加わった。
マイコンメーターの復帰対応が主
10月7日夜、千葉県北西部を震源とする地震が発生すると、東京ガスでは非常体制が敷かれ、導管ネットワークカンパニー長をトップとする災害対策組織が立ち上がった。
同社防災供給部防災グループ防災チームリーダーで課長の土師(はぜ)正聖氏は「今回の地震ではガス設備への被害はありませんでした。主に、震度5程度の揺れを検知するとガスを遮断するマイコンメーターの復帰対応で終わりました」と振り返る。
マイコンメーターは各家庭にガスを引き込むガス管に設置され、使用量を計測するとともに、地震の揺れや異常なガスの流れを検知するとガスを遮断する安全機能を有している。一度ガスを遮断すると、ガスの使用を再開するには、すべてのガス機器を止めたうえで復帰ボタンを押す。するとマイコンメーターが約3分でガス漏れをチェック、異常がなければ利用を再開できる。
地震後にガスが止まると、この復帰方法に関する問い合わせが同社に殺到する。今回は約2万件の電話があったという。

同社の地震防災システム「SUPREME(シュープリーム)」は、地震が発生すると、揺れの特徴からガスが遮断されるマイコンメーターの数を推定し、そこから問い合わせ件数を予測する。10月7日もこの予測をもとにコールセンターの電話受付要員を拡充。現場出動要員も強化し、マイコンメーターの復帰操作に不安がある場合は作業員が出向いて復帰にあたった。
首都直下地震への備え 課題と対策の他の記事
- 状況に応じ医療資源を最適に振り分ける
- 震動検知と自動遮断が機能しガスの被害ゼロ
- 漏水23カ所を一夜で止めた緊急対応体制
おすすめ記事
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
-
三協立山が挑む 競争力を固守するためのBCP
2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。
2025/08/11
-
アイシン軽金属が能登半島地震で得た教訓と、グループ全体への実装プロセス
2024年1月1日に発生した能登半島地震で、震度5強の揺れに見舞われた自動車用アルミ部品メーカー・アイシン軽金属(富山県射水市)。同社は、大手自動車部品メーカーである「アイシングループ」の一員として、これまでグループ全体で培ってきた震災経験と教訓を災害対策に生かし、防災・事業継続の両面で体制強化を進めてきた。能登半島地震の被災を経て、現在、同社はどのような新たな取り組みを展開しているのか――。
2025/08/11
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/05
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/08/05
-
-
カムチャツカ半島と千島海溝地震との関連は?
7月30日にカムチャツカ半島沖で発生した巨大地震は、千島からカムチャツカ半島に伸びる千島海溝の北端域を破壊し、ロシアで最大4 メートル級の津波を生じさせた。同海域では7月20日にもマグニチュード7.4の地震が起きており、短期的に活動が活発化していたと考えられる。東大地震研究所の加藤尚之教授によれば、今回の震源域の歪みはほぼ解放されたため「同じ場所でさらに大きな地震が起きる可能性は低い」が「隣接した地域(未破壊域)では巨大地震の可能性が残る」とする。
2025/08/01
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方