東京湾北部地震による東京都内の負傷者は想定15万人。都はどのような体制で救助・救護にあたるのか(写真:写真AC)

10月7日夜に発生した地震では、JR や私鉄の運転再開を待つ人が駅に滞留し、帰宅困難者が再びクローズアップされた。しかし、東京が抱える問題はこれだけではない。首都直下地震で想定される15万人の負傷者、9600人の死者への対応だ。できる限り死傷者を減らすことを含め、地震発生時の医療救護と救助の体制を福祉保健局医療政策部救急災害医療課と総務局総合防災部防災対策課に取材した。

医療救護・救助 東京都福祉保健局・総務局

災害医療を担う人材と体制

10 月7日夜、首都圏で10 年ぶりに震度5強を観測する強い地震が発生。JRや私鉄などの交通機関が運転を見合わせた。そのため運転再開を待つ人が駅に滞留。タクシー乗り場では長蛇の列が発生し、帰宅困難者が再びクローズアップされた。

しかし、東京が抱える問題は帰宅困難者だけではない。都が2012年に公表した首都直下地震の被害想定では、都内の死者は最大で約9600人、負傷者は15万人に及び、うち重傷者が2万2000人を占めると予想されている。

これだけの多くの負傷者を、都で救助が可能なのか。東京都福祉保健局医療政策部救急災害医療課は「想定規模の重傷者に対応できる体制になっている」と話す。

東京都には現在84の災害拠点病院、136の災害拠点連携病院、それ以外に約400の災害医療支援病院と約1万4000の診療所が存在する。災害拠点病院では主に重症者、災害拠点連携病院は中等者や容態の安定した重症者、災害医療支援病院は専門領域の治療や慢性疾患患者の対応と、役割分担が決まっている。

「東京都の災害時医療の特色は、災害医療コーディネーターを中心とした体制にある」と同課。災害医療コーディネーターは東日本大震災後に導入された役割で、大規模災害時に効果的な医療体制の確保を担う。

東京都災害医療コーディネーターは、都内全域の医療救護活動を統括・調整する都に、医学的な助言を行う。その範囲は広く、東京DMATや東京都医師会の医療救護班の派遣、他県から応援に入る医療班の割り振り、病院間の患者搬送の調整、災害拠点病院や災害医療支援病院への医薬品・自家発電用燃料、水などの補給調整に関わる[図参照]

●災害時における医療救護活動の情報連絡体制①【発災直後~超急性期・急性期】(区部)

島しょ部を除く都内を12に分けた二次保健医療圏で活動する地域災害医療コーディネーターと区市町村の災害医療コーディネーターが連携して医療情報を集約し、限られた医療資源を最適に差配することで、最大限の救護を目指す。