(出典:Shutterstock)

リスクマネジメントや保険に関する業務に従事している人々による非営利団体であるAirmic(注1)は、危機管理コンサルティング大手の Control Risks 社の協力を得て、Airmicの会員を対象として2021年11月にアンケート調査を実施し、その結果を同年12月に「The pandemic goes endemic」として発表した。

タイトルにある「endemic」とは風土病のことである。つまり、新型コロナウイルスは完全に消滅しないものの、従来のパンデミック(世界的大流行)から風土病のような状態に移っていくという考え方に基づいて(注2)、そのような状況変化に対応していくためのヒントや提言がまとめられている。

なお本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる。
https://www.airmic.com/system/files/technical-documents/Airmic_Control%20Risks_The%20pandemic%20goes%20endemic.pdf
(PDF 22ページ/約 5.4 MB)


この報告書は次のような3部構成となっている。

1. Learning the lessons(教訓を学ぶ)
2. Boosting preparedness(備えを強化する)
3. Building resilience(レジリエンスを形成する)

これらのうち1.は、これまでのパンデミック対応からどのような教訓を学び、今後に生かしていくかという内容となっている。これは筆者が最近特に問題意識を強く持っているテーマに通じるものであるため、本稿ではこの部分から代表的なデータをピックアップして紹介する。

図1は、世界がパンデミックを切り抜けようとしているとき、回答者が所属している組織がどのように教訓を学び取ったかを尋ねた結果である。最も多かった回答は「経営層に対する正式な危機報告会(crisis de-brief sessions)や教訓を学ぶ会議("lessons learned" sessions)を通して」であり、回答者の40%を占めている(注3)。

画像を拡大 図1.  パンデミック対応からどのような方法で教訓を学び取ったか (出典:Airmic / The pandemic goes endemic)

また、「実務レベル(team operating level)での正式な、教訓を学ぶ会議を通して」という回答も18.8%あるので、前述の回答と合わせると回答者の58.8%が、自分が所属する組織には教訓を学ぶための正式なプロセスが存在していると回答していることになる。

なお、「正式でない(ad hoc informal)教訓を学ぶ会議を通して」という回答も24.7%あるので、これも含めると実に回答者の8割以上が、これまでのパンデミック対応を振り返り、教訓を学ぶための機会を何らかの形で設けているのである。本報告書のなかでは、これらは「post-incident review」と総称されているが、これは「リスク対策.com」サイト上で多くの識者から言及されている「after action review」(AAR)と同義である(注4)。