リスクマネジメントの第1歩とも言えるリスクの洗い出しに課題を持っている企業は少なくありません。「他社はどのようにやっているのか」「単純作業のように毎年行うことに意味があるのか」など、疑問や課題を感じている企業も少なくないのではないでしょうか? 今回は、リスクの洗い出しの目的や手法、改善のポイントを解説します。

■事例 洗い出されるリスクが毎年同じ企業

企業でリスクマネジメントを担当しているAさんは、自社のリスクの洗い出しについて疑問をもっています。

Aさんの会社では、リスクマネジメント導入初年度に「アンケート方式」によってリスクの洗い出しを行いました。各部門や部署から同一の方法でリスク情報を収集するため、当時の担当者が「調査票」を作り、その当時に考えられるリスクを「リスクリスト」にまとめ、記入見本と共に配布してリスクの洗い出しを行ったのでした。導入初年度だったこともあり「どういったものを報告するのかが分からない」という社内の声に対応するため、リスクリストや記入見本を作成した上でリスクの洗い出しを実施しました。そこで洗い出されたリスクはおよそ300項目にのぼりました。

そこから10年以上が経ち、Aさんはリスクの洗い出しが不十分なのではないかと感じています。洗い出しのため「アンケート方式」が変わらすに採用されており、ここ数年、ごくまれに「新型コロナウイルス」や「ガソリン価格の高騰」といった世の中の話題となったものが追加されはするものの、基本的に洗い出されるリスクの中身が数年前と変わらなくなっています。

「事業内容が変わっていないのだから、当社のリスクもそんなに変わらなくて当然だ」「毎年毎年、新たなリスクが加わる方がどうかしている」という社内の声も聞かれ、洗い出されるリスク項目は毎年ほぼ変わらない内容になっています。

Aさんは、「当社のリスクの洗い出しが、現場では毎年の事としてマンネリ化しているのではないか。その結果、何か重大なリスクが見落とされていることは無いのだろうか」と感じています。また、「他社ではどのような方法で洗い出しを行っているのだろうか」と考えています。