アジア地域のEHS規制動向
中国、韓国、インドに見る企業責任の強化
田崎 裕美
エンヘサのコンサルティング部門にて、主に日本企業のプロジェクトを担当。Enhesa入社前は、グローバルなEHSコンサルティング会社にて200以上のグローバルEHSプロジェクトを国内外の顧客に提供。15年以上にわたってEHSコンサルティング業に携わり、数多くのEHS監査、法規制調査、リスク評価等をプロジェクトマネージャーとして実施してきた。
2022/03/10
寄稿
田崎 裕美
エンヘサのコンサルティング部門にて、主に日本企業のプロジェクトを担当。Enhesa入社前は、グローバルなEHSコンサルティング会社にて200以上のグローバルEHSプロジェクトを国内外の顧客に提供。15年以上にわたってEHSコンサルティング業に携わり、数多くのEHS監査、法規制調査、リスク評価等をプロジェクトマネージャーとして実施してきた。
過去10年を振り返ると、環境安全衛生(EHS)は世界的に進展し、強化されてきました。特に近年は、アジアや中南米でのEHS法令の整備が急速に進んでいます。欧米や日本の基準で管理していればアジアの拠点は問題ないという時代は過ぎ去りました。アジアでは、世界で最も厳しい基準を設ける国も出現しています。本稿では、アジアの主要国である中国、インド、韓国での最近の特徴的な3つの動向―気候変動、生産の安全規制、環境情報の開示―についてお伝えします。
社会経済情報のグローバル化に伴い、EHS規制は、世界的に整合してきています。これは環境安全面での国際条約、例えば化学物質管理におけるストックホルム条約や水俣条約等がけん引の一端を担っていると考えられます。その点で、特に顕著なのは、気候変動の分野です。昨年のCOP26を受け、各国は温室効果ガス排出に関し、ネットゼロを目指す取り組みが開始しています。
アジア諸国でも正式にネットゼロを政策として打ち出す国が増加しています。カーボンニュートラルを法制化しているアジアの国は日本と韓国です。この2カ国は、 2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を設定しました。一方、中国とインドは、それぞれ2060年と2070年までにカーボンニュートラル目標を設定しています。
排出量取引については、欧州EU ETS(欧州域内排出量取引制度)、米国のRGGI(地域温室効果ガスイニシアティブ)の歴史が古いですが、中国でも2010年代からモデル事業が開始されており、昨年法制化されました。中国の炭素排出権取引管理方法2021年2月1日に施行され、排出権の割り当て、登録、取引、及び温室効果ガスの排出報告や査察を含む、国内の炭素排出権取引及び関連活動に対する監督措置を定めています。2021年に取引制度に2,000以上の発電所を含めることにより、炭素取引市場を拡大してきました。本制度は、現在、温室効果ガスの年間排出量がCO2換算で26,000トン以上の発電事業者だけを対象としていますが、将来、化学、建築材料などの産業もカバーされる予定です。
なお、韓国では、2015年から炭素取引を導入しています。アジアの他の国、例えばインドネシア、ベトナム、タイ、日本などでも、炭素排出量取引市場の設立が検討されています。
グローバル企業は、このような排出量取引制度をうまく活用し、CO2排出の課題に対応することが望まれます。
寄稿の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方