スローガンで満足せず実践活動につなげる(写真:写真AC)

■温暖化対策とイメージアップ戦略の取り違え

今回の最終回では、マルチハザードの中でも人類最大の脅威である気候変動リスクへの適応について、再度取り上げたいと思います。企業が気候変動に立ち向かうためには、2つの戦略を積極的、継続的に推進していかなくてはなりません。一つは「実効性のあるCO2削減努力をする」こと、もう一つは「気候災害から事業を守る」ことです(どちらか一方だけというのは無意味です)。

近年は企業のSDGsへの取り組みがブームとなっていますが、その中の「目標13:気候変動への具体的な対策」を実践している企業はどれだけあるでしょうか。事実、SDGsがかつてのエコロジーブームのように安易に受け止められ、耳に心地よいスローガンのような目標の方に流れてしまっているのではないかと危惧する声も少なくありません。

1980~90年代に見られたエコロジーブームは、製品や商品、名刺にまで「エコ」とか「地球にやさしい」といったラベルを貼ることで、あたかも多くの企業が地球環境の保全に貢献し、世の中が良い方向に向かっているかのようなイメージを植え付けられたものです。

SDGsがスローガンと化している懸念も(写真:写真AC)

今現在さまざまなSDGsに取り組んでいる企業は多々あり、そのために時間や労力、費用を割く意義は貴重なものではあります。しかし実質的な気候変動対策が奏功せず、このまま気温が上昇し続ければ、地球はSDGsに向けられたすべての努力が水疱に帰してしまうほどの過酷な環境(人類の生存に適さない)の惑星になってしまいます。

企業は今一度、何のためにSDGsをやろうとしているのか、設定した目標が刻々と悪化する地球環境に少しでもブレーキをかける役目を果たせるのか、自問自答してみる必要があります。