いまこそDXを使った事業影響度分析を
第16回:首都直下地震の新想定を生かす(1)

林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2022/06/24
企業を変えるBCP
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
首都直下地震や南海トラフ地震が首都東京をどのように襲い、どのような被害が出るのか、東京都は5月25日、被害想定の見直し内容を公表しました。大きく内容が変わったわけではないにしろ、具体的な「様相」を示し、被害の状況(予想)が分かりやすくなっています。
この想定は、都の「防災」という枠組みで示された内容なので、我々危機管理コンサルタントは企業BCPとの接点を見ようとしますが、筆者は「帰宅困難者」に目が行きました。今回の想定で437万人と、前回の想定517万人より少なくなっていますが、BCP 的には、停電による空調停止時のオフィス滞在の困難さや帰宅者を抑え込めない場合の他への影響など、新たに指摘された問題もあります。
また、被災状況が具体的に見えてくるに従い、我々は、過去から引きずる「事業影響度分析」の問題を再度声高に言いたくなってしまいます。“事業影響度分析をせず” に BCP を構築し、マニュアルをつくり、訓練する...果たして...。
事業影響度分析とは、例えば大きな震災有事に際して、被災が会社の事業に与えるマイナス要素(時にプラス要素)をつまびらかにし、対策を検討するためのBCP活動の一つです。有事における経営方針、企業戦略の策定ともいうべき重要な活動で、この活動によって被災リスクの高い立地からの移転や売上の低い商品の廃止などを判断できる場合があります。
分析といっても、実施することは実にシンプルです。事業(商品やサービス)の売上や利益に対応したランキングを定め、被災による社会や市場の変化を踏まえた重みづけをし、継続事業の優先度を決めたり、代替手段を考えたりするものです。
売上や利益に関しては、自社のホームページの IR 情報を見れば、他社でもできてしまう範囲のものです。これを事業影響度分析における「定量分析」といいます。
企業が事業影響度分析をしない理由の一つは、おそらく、もう一つの「定性分析」に理由があるかもしれません。定性分析は、例えば巨大震災が発生した際、その被害状況によって対象事業の市場や状況は大きく変化しますが、これを見極めるのが難しいと考えられているのではないかと想像します。
そこに経営的な要素を加えるなら「コンテキスト分析」、つまり優先したい事業を自社リソースだけで継続するのか、他社リソースをOEMなどとして利用するかの判断もあるでしょう。
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