安倍元首相が銃撃受ける 現場となった大和西大寺駅付近(Photo by Shuzo Kayamura/AFLO)

安倍晋三元首相が奈良市での街頭演説中に銃撃され死去した事件は、彼の功績を改めて世界に知らしめる半面、安全と思われていた日本社会への信頼を大きく失墜させた。社会全体の危機管理について見直していくことが大切だ。

警察における警護、警備の在り方については、奈良県警察本部の鬼塚友章本部長が9日の記者会見で「問題があったことは否定できない」と認めている。この点は今後の検証結果を待つとして、一般市民としても、銃犯罪などが起きた際の行動を見直していく必要がある。

今回の事件では、SNSにより事件前後の状況が生々しく配信された。その映像を見る限り、1発目、そして2発目の銃声が鳴り響いてもなお、身を低くしたり、その場を急いで離れるなどの安全行動をとった人はほぼいないように見受けられる。テレビのインタビューでは多くの人が「銃声のような音がした」と発言していた。銃声をどこまで正確に認識していたかは定かでないが、銃声と思ったにも関わらず多くの市民が安全行動をとれなかった。現場にいた警官なら、少なくとも爆発音であることは認識できたはずだ。犯人が複数に及ぶ事態も想定しなくてはいけなかった。しかし、近くの市民に、身の安全確保を呼び掛ける様子はない。

米国土安全保障省の市民向けウェブサイト「Ready.gov」では、混雑した公共スペースでの攻撃に対しては、攻撃者からとにかく早く離れることを呼び掛けている。

奇しくも、新型コロナの感染拡大以降、鉄道での相次ぐ刺傷事件や、大阪北新地における放火事件など凄惨な事件が後を絶たない。こうした凶行な事件が起き得ることを頭の片隅にでも入れて、いざという時の対応を考えておくべきではないか。