会員への働きかけ、情報伝達の方法としては、エリアを4つのブロックに分けて「居留地隣組」を組織。各ブロックに「ブロックリーダー」となる企業を決め、隣組内でコミュニケーションがとれる仕組みを作っている。そして、各企業の連絡先や代表者を毎年確認し、防災活動のマニュアルをエリア内のすべてのビルに配るようにしている。

写真を拡大 地図上に医療資源や情報・防災資源がわかりやすく示されている

課題は帰宅困難者対策とマンション問題

20年近くも継続して活動をしている理由はいくつか挙げられる。まず、年間の予算(50万円弱)とスケジュールを決めて活動していること。「備蓄品は毎年、見直しをするので予算があれば結果的に活動せずにはいられないのです」(山本氏)。会員があまり入れ替わらず、委員会のメンバーが固定していることも大きい。「ビルオーナーのほとんどが顔見知りで、もともと親睦目的の団体で日常的に交流が図られているから、継続的に防災活動に取り組めるのではないでしょうか」(常任委員長の富岡良典氏)。「商売人は自己責任意識が強いので、いざというときは自分で何とかするという自助の考え方が身についている。でも、単独では行動に限りがあるし効率も悪い。共助という形で防災委員会が活動し、その成果を会員の各社に分配するという考え方で取り組んでいるから継続できるのではないでしょうか」(西金氏)という意見もある。

懸案事項の1つは、帰宅困難者対策をどうするかということ。阪神・淡路大震災は早朝に発生したため、神戸市は帰宅困難者対策の経験がないが、マニュアルでは、雨露をしのぎ、トイレくらいは提供しようということで、「受け入れることにしよう」と書かれてはいる。想定する引き受け人数は、とりあえず1ビルにつき平均20人、100ビルで2000人くらい。ただし、帰宅困難者を引き受けることを法的に義務付けているわけではなく、また、一度引き受けてしまえば、長期間滞在されてしまう不安もあるため、72時間以上の滞在者には、防災・防犯委員会が責任を持って退去を呼びかけるという。

これからの取り組みの課題はマンション問題だ。「阪神・淡路大震災の頃には(旧居留地内には)2棟くらいしかありませんでしたが、その後、何棟かマンションが建っています。しかも、どういう人が住んでいるか当方では把握できていない状況です。かといって、非常時にはそのまま放っておくわけにもいきません。どう防災活動に巻き込んでいくのか、これから考えていかなければなりません」(山本氏)。

行政とも連携しながら、旧居留地という商業地域が自主的に防災コミュニティをつくり活動を展開している連絡協議会の活動に、これからも注目していきたい。


神戸市中央区
世帯:7万5896世帯
人口:約13万人
面積:2.8ヘクタール

旧居留地
人口:約1000事務所
面積:約22ヘクタール
特徴:企業の集積地、戦前から神戸の中心地。約100 社の事業所が連絡協議会に参加