大阪北部地震から見たBCP見直しのポイント
アンケート結果から読み解く大阪北部地震への対応の課題(最終回)
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
2018/07/09
独自調査
中澤 幸介
平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。数多くのBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト「平成25年度事業継続マネジメントを 通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務」アドバイザー、「平成26年度地区防災計画アドバイ ザリーボード」。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」がある。
シリーズで紹介してきた「大阪北部地震に関する企業へのアンケート調査結果」。今回は、アンケートに寄せられた自由回答と、アンケート結果を踏まえたBCP見直しのポイントについて紹介する。
自由回答では、各担当者が直面したさまざまな課題や、システムの不具合なども回答していただいた。
【課題】
・勤務中だった社員の自宅被害状況確認のために帰宅要請と、出勤遅延が重なり従業員確保が難しくなった。
・従業員がエレベーターに2時間ほど閉じ込められたが、EV内の備蓄品の携帯電話の充電器がiPhoneに対応していなかった。
・オフィスビルへの入館が制限された
・工場再開の判断ができなかった
・トップが指揮をとらずにBCPが機能しなかった
・緊急停止した電車にどのくらい社員が閉じ込められているのか把握できなかった
・出社させずに帰宅させようとしても通達手段がなかった
・出社途中において帰宅をさせるか判断に苦慮した
・現場と本部との連携、報告ルートが一本化できなかった
・災害情報などを共有してほしいという社員が増えた
・事前に決めていたことに、多くの漏れが見つかった
・対策の中心となる総務が被災して対応が遅れた
・水と食料のほかにガスコンロとボンベを送ったが、ボンベは航空便では送れないので、別便となった(支援物資の管理を見直したい)。
・被害状況の確認で、担当者の回答が遅い。
・ビルの立体駐車場が夕方まで機能しなくなり、社有車利用に影響が出た。
・災害対応にあたる同じ総務部門内でも意識差があった
・非常用発電機が稼働しなかった
【改善案】(上記課題の他)
・従業員の社内宿泊の検討
・同様の災害が起きた場合、出社せずに個人の判断で帰宅させるなど出退者判断基準の検討
・被災地社員のタスクリストの見直し
・耐震、什器類の転倒防止、棚からの落下防止
・従業員の防災教育(社員の判断力の醸成)
・マニュアル類の見直し
・対策本部の設置の社員への周知
・安否確認システム・ルールの見直し
・本社―支社間の支援ルールの見直し
・施設への立ち入り判断の検討
独自調査の他の記事
おすすめ記事
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方