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どの企業も、広報活動において危機に陥ることなくスムーズにビジネス展開したいと願っていますが、現実は苦境に立たされる場面は少なくありません。広報の危機を解決するためには、適切なコミュニケーション戦略を駆使する必要があります。

今回はESGコミュニケーションとインフルエンサーの起用をミックスすることが、意外にも企業の危機を回避することにつながった事例とそのポイントを解説します。

2020年、イギリスのオンラインファッション通販会社のブーフー(Booho)は、商品を供給していた工場の労働者の給料が、4.4ドルという低時給だったと英紙サンデー・タイムズに報道され、非難を浴びることになりました。

最悪だったのは、この報道が、別の労働者団体による報告書の中で、問題の工場がソーシャルディスタンスなど、ウイルスに対して必要な予防措置を講じておらず、労働者をCOVID-19の感染の危険にさらしていると指摘された後だったことでした。

批判が高まる中、Amazonなどの大手小売業者は取り扱いをやめ、ブーフーの市場価値は2日間で1.5ポンド(約18億円)以上急落しました。

しかし不思議なことに、こうした報道があってもなお、若い購買者の大部分(Vogue Businessの調査によると50%)は買い物を続けました。ブーフーは最終的に2020年から2021年にかけて利益が増え、具体的には2021年8月まで9億7590万ポンド(約1197億円)まで伸びたと発表されています。

Z世代は最も持続可能性を重視する世代であると認識されていますが、ブーフーが危機を乗り越えた要因はなんだったのでしょうか? その一つがインフルエンサーの活用と推測できます。

まずブーフー側は、初動対応としてサプライヤーに提示している行動規範が守られていないことが確認されれば、その企業との契約を打ち切ると声明を出しました。

そして独自の調査を行うと発表し、サプライチェーンにおける不正行為を排除するための対策に、1000万ポンド(約13億5000万円)を支出すると発表しました。

同時に、インフルエンサーを起用し信用回復の施策を行いました。声明を掲載した翌日に、モリー・メイ・ヘイグをはじめとする大きな影響力を持つインフルエンサーが商品の宣伝広告をYouTubeにアップし、この動画は40万回以上も再生されました。

 

出典:Boohoo YouTube

適切な初動対応に加え、迅速にインフルエンサーを起用した施策によりブーフーは危機を乗り越えることができました。インフルエンサーとコラボレーションすることで、危機を回避し、ブランドイメージをポジティブにし、企業広報に広範囲にメリットをもたらしたといえます。

インフルエンサーは、いうまでもなく影響力のある人たちです。フォロワーは、彼らをあるニッチな分野での専門家とみなし、彼らの推薦するものを高く評価します。そのため、危機に陥ったとき、インフルエンサーを起用して、オーディエンスに支持されるコンテンツを作ることができれば、企業に対する信頼を回復させ、危機の影響を緩和する可能性が高まるのです。