2023/04/24
インタビュー
OpenAIが開発した対話型AIツール「ChatGPT」が2022年11月にリリースされ、日本でも大きな話題となっている。質問するだけでさまざまな問いに即座に文章で回答してくれるという便利な機能が魅力である半面、その利用にはさまざまなリスクも想定される。ChatGPTをはじめとするAIサービス利用において、いち早く社内向けのガイドラインを策定したクラスメソッド株式会社CISO兼危機管理室長の江口佳記氏に、ガイドラインの策定に至った背景やAIサービスを利用する際に生じるリスクなどをうかがった。
ChatGPTはあくまでアシスタントとして活用する
Q. 企業のChatGPTの活用の流れをどのように見ていますか?
2022年の末からChatGPTが話題となっています。こうしたAIサービスは、事業を行う上で今後はますます欠かせないものになっていくと思われます。ただ全体的にはまだ活用法を模索している段階で、自社のどの業務にChatGPTを使っていくのかを考えているフェーズと言えるでしょう。
Q. 自社ではどのようにChatGPTを活用していく予定ですか?
ChatGPTでブログなどの文章を全て生成するケースもありますが、情報の精度が高いとは言えないため、正しい情報が出力されるとは限りません。ChatGPTは新たな知識を得たり新たなコンテンツを作成したりするツールとしてではなく、すでに自分たちの頭の中にあることを整理したり、思考の壁打ちをする相手としての使い方が適しているといえます。
当社でもその用途でChatGPTを活用し「業務効率化と価値向上を支援するコンサルティングサービスを開始した」というプレスリリースを作成しました。プレスリリースを作成する前段階では、自社の事業内容と合わせてどのようなコンサルティングサービスができるかを具体化する必要があります。そこでChatGPTを活用して情報や方向性などを整理し、プレスリリースの作成に移りました。
AIサービスを使用する際に想定すべきリスクとは
Q. ChatGPT活用にどのようなリスクを想定していますか?
web上で情報を入力するChatGPTのようなAIツールの場合、入力した情報がAIの学習に利用される可能性があります。これは避けるべき重大なリスクです。例えばChatGPTの場合、APIとしてプログラムに組み込んで使用する場合は入力した情報がAIに学習されることはありませんが、web上でChatGPTを使用する場合、基本的には学習に使われてしまいます。個人情報や機密情報を入力してしまうとそれが学習に使われてしまい、他のユーザーに対してアウトプットされてしまう恐れがあるのです。
これはChatGPT に限らず、他のAIツールであっても生じるリスクです。AIツールを導入する際には、利用規約やプライバシーポリシー、リファレンスなどを必ず確認しましょう。当社では「DevelopersIO」というサイト上で技術的な発信を行っており、知見や情報を共有しています。ChatGPTの規約についてもサイト上で情報共有していますので、ぜひ参考にしてください。
参考:ChatGPT APIリリースに伴ってOpenAIのAPIデータ利用ポリシーが改定されたので読んでみた/DevelopersIO
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
競争と協業が同居するサプライチェーンリスクの適切な分配が全体の成長につながる
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
2025/12/04
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/12/02
-
-
-
-
-
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方