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本連載では海外の調査機関や企業などから発表されたさまさまな調査報告書を紹介しているが、今回は若干趣向を変えて、報告書単体ではなく、調査結果に関する情報発信が継続的に行われている例を紹介させていただきたいと思う。

英国に本拠地を置き、リスクに関する情報分析を手がけるVerisk Maplecroft社(注1)は、同社が継続的に実施している調査結果に基づいた情報を、「Featured Insights」というコンパクトな記事にまとめて自社のWebサイトに掲載している。情報収集の対象は概ね地政学リスク、環境関連、人権問題関連の3つであり、いずれも下記リンク先で無料で公開されている。
https://www.maplecroft.com/insight/featured/

掲載頻度は固定されていないようだが、概ね毎月3件から6件くらいのペースで、前述の3つの分野のいずれかに関する記事が掲載されている。直近の記事は5月25日に掲載された「UK’s post-Brexit Pacific trade deal fraught with environmental and human rights risks」(英国のEU離脱後の太平洋地域における貿易取引は環境や人権に関するリスクを伴う)という記事で、環境関連と人権問題関連にまたがる内容となっている。

恐らく当サイトの読者の皆様にとって関心が高そうな(と筆者が勝手に推測している)地政学リスクに関しては、5月18日に掲載された記事「Civil unrest in Africa hits 6-year high」(アフリカにおける社会不安が過去6年間で最多となった)が最新であり、下記リンク先でお読みいただける。
https://www.maplecroft.com/insights/analysis/civil-unrest-in-africa-hits-6-year-high/

図1は前述の記事に掲載されているもののひとつで、2023年の第2四半期におけるアフリカ各国の社会不安指数と、2023年におけるストライキや暴動の発生状況を示したものである。社会不安指数(Civil Unrest Index)はVerisk Maplecroft社が独自に開発しているリスク評価指標のひとつで、経済、政治、または社会的要因に反応したデモや暴動などによってビジネスが悪影響を受けるリスクを各国ごとに評価したものである。図1では各国が社会不安指数に応じて色分けされており、スーダンを含むアフリカ中央部に、最も高い「Extreme」というレベルが集中しているほか、全体的にリスクが高い状況にあることが分かる。

画像を拡大 図1.  2023年第二四半期のアフリカにおける社会不安指数と、ストライキや暴動の発生状況 (出典:Verisk Maplecroft社Webサイト https://www.maplecroft.com/insights/analysis/civil-unrest-in-africa-hits-6-year-high/


記事によると、2022年第2四半期から2023年第2四半期の間に、アフリカの36カ国で市民不安指数が上昇しており、これは2017年に同社がデータベースの整備を始めて以来最大の増加だという。また、広範囲な食料不足や政治の不安定さなどの影響で、抗議活動の規模や頻度は今後数カ月にわたって増加傾向にあるという。