保険回収への準備

気候変動の影響を受けてか、自然災害が頻発している。自然災害は多くの物的な損害をもたらす。また、そうした損害は事業中断を引き起こすこともあり、事業収入の損失につながる。当然、これらのリスクに対して、企業は保険でリスク移転を試みる。ところが、事業中断保険の請求は複雑さが伴い、簡単には補償金を獲得することができないことも、また想定した額を下回ることもありうる。発生した事業収入の損害を補いことができないリスクも存在する。保険金請求を円滑にし、保険回収を最大化するために、十分に準備しておくことが求められる。

自社内での体制確立

まずは自社内での体制を整えることである。通常、物的な損害が事業中断に結び付く。そのため、物的な損害が生じたときには、修復する前に徹底的にその状況を観察し、写真なども含めた詳細な証拠記録をとることが必要となる。その際、建築の専門家や査定人など、専門家の意見を取り入れることも忘れてはならない。保険会社は保険ではカバーされていない損傷を見出し、減額を検討するのが常であるからである。

こうした準備は、より複雑な手続きが要求される事業中断保険での対応に向けた基盤づくりにつながる。そこでは保険はもとより、会計や法律の専門家も含めた、より広範な対応能力が問われる。自社に適したチーム作りの巧みさが問われるのである。

補償の論拠を整理

保険請求に当たっては、保険証券を精査して補償形態、補償場所、補償される損失原因、除外事項、損失計算方法を理解し、補償を請求するための論拠を整えておく。とはいえ、保険によってどの程度補償されうるかは、保険会社との交渉結果を待たねば分からない。補償がないことを前提として修理・復旧に関する意思決定を下し、保険会社が補償範囲を提示した後に、高額な修理を進めることである。