ESG(環境・社会・ガバナンス)リスクは、リスクマネジメントでの大きな課題になりつつある。実際、ESGに関わる情報開示に関しては、強制を伴うものばかりではないとはいえ、多くの提言が出されていて、それを無視することは社会的責任を果たさないことにつながりうるといったリスクにもなりかねない。この意味でも、ESGリスクに関しては、具体的な対応策を検討するばかりでなく、そうした活動についての情報開示の在り方についても、適切な対策が求められている。

基準の統合へ向けて

ESGに関連した基準については、これまで多くの機関が設定している。その代表的なものをみると、次のものがある。

・ 国際財務報告基準(IFRS)財団:
世界中で一貫性のある、透明性の高い財務報告を推進することを目的として、財務報告基準の策定と発布を監督する非営利組織

・ 国際サステナビリティ基準委員会(ISSB):
IFRS財団が設立した委員会で、サステナビリティ報告に一貫性、比較可能性、透明性をもたらし、資本家や金融市場がより良い意思決定を下し、資本配分を改善することを目的としている

・ 気候変動開示基準委員会(CDSB):
気候変動に関連する情報を、財務報告に統合することを推進する目的で設立された非営利団体で、IFRS財団に統合された

・ サステナビリティ会計基準審議会(SASB):
サステナビリティ報告に関して、11セクター77業種について、情報開示に関する基準を作成、公表し、業界特有のサステナビリティ会計基準を設定している

・ グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI):
気候変動や人権問題など、サステナビリティに関する取り組みを推進するために設立された機関で、サステナビリティ報告の改善、共通化を目指している

・ 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD):
企業の気候変動への取り組みや影響に関する財務情報を開示するための枠組みを設定する

・ カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP):
企業が排出する二酸化炭素などの温室効果ガスの量を定量化して、見える化させることに取る組んでいる非政府組織(NGO)

・ 価値報告財団(VRF):
非財務報告基準を開発してきた主要団体SASBと国際統合報告評議会(IIRC)が統合した組織で、IFRS財団がISSBを設立したことで、ISSBに統合した。

代表的な機関の活動をみると、サステナビリティ報告に関する基準は、IFRSとその中に設けられたISSBが中心になって、基準を統合する動きが現れていることが理解できる。グローバルで統一された基準に向けて動き出している。