2024/09/25
人権尊重という企業責任
「ミキハウス」のブランドでベビー服や子供服、靴、玩具などの販売を世界中に展開する三起商行(大阪府八尾市、木村皓一社長)が、委託先のミャンマー工場の人権侵害を指摘されたのは2016年11月だった。同社は第三者機関を設立して調査。結果をもとに工場に改善を依頼し、実行された。その後、各種方針や規範を策定し、2019年には人権デュー・デリジェンスの取り組みを開始。責任あるサプライチェーンの構築に力を注いでいる。
突然の人権侵害の指摘
大阪府八尾市にある三起商行本社ビルの地下に立地する、ミキハウス情報発信の拠点となる「ミキハウスラボ」。赤に白抜きのおなじみのロゴ『miki HOUSE』があしらわれた柱を中心に、数多くの子供服が動きのあるポーズでディスプレイされている。
同社執行役員で経営企画本部ESG推進部部長の平野芳紀氏は「子供服を販売している当社にとって、児童労働は絶対にあってはならない。子供以外の労働者の権利も同様です」と語る。同社は人権デュー・デリジェンス(DD)を実施し、自社製品に関わる国内外の労働者を含めた責任あるサプライチェーンの構築に取り組む。
三起商行に突然、海外労働者の人権侵害の指摘が届いたのは2016年11月。青天の霹靂だったという。グループ会社であるミキハウストレードに、日本に本拠地をおく国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」から、委託先であるミャンマーの縫製工場における労働者の権利侵害と労働環境の不備などを示した書面が送られてきた。封筒は、特別に目立ったものではなかったという。ミキハウストレードから三起商行に報告が上がってきたのは、一定期間が経過した後だった。
当時は、外国人技能実習生の受入企業・団体を監督する組織設立などが盛り込まれた技能実習法の施行目前。三起商行では、日本国内で製品製造を行う委託先工場の92社に、実習生の雇用状況に関するアンケートを依頼しているタイミン グだった。「欧米など海外で販売していることもあり、以前から海外サプライヤーの対応が 必要なのはセミナーなどに参加してわかっていました。それでも、海外の人権に関してはピンときていなかったのが正直なところ。いずれはという気持ちでした」と、社長室製品安全管理部部長の上田泰三氏は振り返る。
指摘に対し、回答すべきかどうか即断できなかったという。そこでアンケートで協力を得ていた別のNGOに相談し、対応に動いた。第三者機関の設立を決定し、調査を依頼。2017年1月に「ミャンマー委託先工場調査報告書」を公表した。
指摘を受けたミャンマーの工場は、日本の商社から委託された韓国資本の工場で、サプライヤーとして把握できてはいなかった。三起商行はグループ会社も含めて工場を持たず、服の製造などすべてを委託している
同社は商社を通じて働きかけ、その工場では労働時間や賃金、労働環境の改善がなされた。同年には「CSR調達方針」「サプライヤー人権方針」「サプライヤー行動規範」を次々に策定し、発表。ヒューマンライツ・ナウへの報告会を設けるなど、その後もやり取りは5年ほど続いたという。
以降の三起商行の動きは速かった。2017年10月に取引先である工場や商社を集め、CSR調達に関する説明会を開催。「CSR調達方針」「サプライヤー人権方針」「サプライヤー行動規範」への理解を求めた。同時にサプライチェーンと人権に関する専門家の講演を設定。この説明会には56社が参加した。
事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/06/23
-
W杯に水を差したDAZN契約プラン表示が原因で大炎上
世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯が6月12日に開幕。日本は1勝1分けで決勝トーナメント進出を大きく引き寄せている。その裏でW杯の視聴契約を巡ってSNSで大炎上していたのが、スポーツコンテンツの配信会社であるDAZNだ。W杯の全試合を視聴できる年間契約プラン表記に問題があり、13日にお詫びを発表した。しかしその対応も反感を買い、炎上は継続。最終的には年間プラン自体を取り下げた。DAZNの何が問題だったのか、消費者問題に詳しい住田 浩史弁護士に聞いた。
2026/06/23
-
-
-
-
企業の副業解禁とコンプライアンス対策を支援
企業の副業解禁の流れが加速している。従業員は本業以外の労働を増やすことで、収入増が見込める。従業員が副業で獲得したスキルで、本業への貢献も期待できる。企業側にとっても、副業は採用活動に活用できる。業務発注から関係を深めてからの転職や採用後のミスマッチを防止する効果がある。一方で、副業の一般化に伴い、同業他社での競業や情報漏えい、ブランド毀損、過重労働など、副業リスクは増加している。フクスケ(東京都千代田区)は、企業の副業制度の運用支援に加え、副業コンプライアンス向上に関するデータを分析し、リスク診断サービスも提供している。代表取締役社長の小林大介さんに、企業の副業解禁がもたらす影響について話を聞いた。
2026/06/12
-
-
-








※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方