2024/12/23
オピニオン
防災庁設置でどう変わる?
こうした中、石破政権によって防災庁の設置に向けた動きが本格化し始めた。「防災庁」で、真っ先に思い浮かぶのがFEMA(米国連邦緊急事態管理庁)だ。国土安全保障省(DHS)の一部で、大災害に対応する米国政府の専門機関である。1960年代から1970年代にハリケーンや地震災害が相次いだことから、ジミー・カーター大統領時代の1979年に、独立した連邦機関として設置された。2003年には、ブッシュ政権による組織改編で国土安全保障省に編入された。その後、指揮系統の混乱などによる災害対応の遅れなどがしばしば指摘されているが、膨大な国土を守る上での不可欠な存在となっていることは間違いない。そのアメリカすら、2024年は過去最大規模のハリケーンが連続で上陸し、甚大な被害を受ける「まさか」の事態が発生した。
FEMAのロゴマークは鷲である。現在はDHSと同じマークに統合されているが、「鷲の翼が内側の円を突き抜けて外側の輪に飛び出しているのは、伝統的な官僚主義を打ち破り、政府の機能を異なる方法で遂行することを示唆している」(DHSホームページより)のだという。中央には海、山、空が描かれている。平和的な対応が求められる中、あらゆる場所で、あらゆる危機に対して備える姿勢を表している。日本の防災「鳥」はどんな姿が描かれるのだろう。自治体の災害対応力を補うためには新たなテクノロジーが不可欠だ。DXを駆使したアンドロイドの鷲はどうだろか。少なくとも、「まタカ」は、やめてほしい。来年は1995年に発生した阪神・淡路大震災から30年目の節目を迎える。日本の防災がどこまで進化したのかが問われる。

災害以外のリスク
災害以外のさまざまなリスクに目を向けてみよう。企業の不祥事は、「またか」の連続だった。「既知の既知」への対策すら十分とは言えない。いや、おそらく、知っていると思い込んでいることが陥穽(かんせい)なのかもしれない。自分たちの都合だけで物事を考え、判断する。これが陋習(ろうしゅう)化したリスクになっていることに気付いていない。消費者の目線から、自分たちが常識と思っていることを一度疑ってみるべきではないか。
気候変動と同じように年々脅威がますサイバー攻撃への対策も急務だ。2024年は委託先のウイルス感染から大量の情報漏洩が発生する事態が相次いだ。自社の対策だけでは不十分になっている。取引先や委託先、サプライチェーンに至るまで網羅的な対策をしていくことが求められる。
サイバー攻撃に限らず、取引先などに極度に依存するリスクへの対策も不可欠だ。7月に発生したマイクロソフトのシステム障害は世界を震撼させた。数社が市場を独占するIT・インフラ分野においては避けようがないリスクともいえるが、「まさか」では済まされまい。やはり、自社の事業を継続する上で不可欠なリソースについては、万が一の代替手段を持たなければ、一蓮托生を覚悟するしかない。
最後に、本当に先を読むことが難しいのが世界情勢だ。2024年は各国で選挙が行われた。特に注目されるのが来年発足する第二期トランプ政権の動き。中国との関係はどうなるのか、台湾危機への影響は?「未知の未知」のリスクに備えるには、今分かっていることを少しずつでも整理して既知に変えていくしかない。こちらは鵜の目鷹の目が求められる。
オピニオンの他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方