2025/03/01
防災・危機管理ニュース
【ワシントン時事】トランプ米大統領は2月28日、ホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。ロシアのウクライナ侵攻終結を巡り、互いの主張は平行線をたどり、激しい口論の末、会談が決裂。予定していたウクライナの鉱物資源の権益に関する合意文書への署名は中止となり、トランプ氏が目指すウクライナでの停戦実現は遠のきそうだ。
第2次トランプ政権が1月に発足後、首脳会談は初めて。大統領執務室に詰めかけた記者団を前に、トランプ氏が鉱物資源に関する合意を「非常に公平な取引だ」と評価すれば、ゼレンスキー氏も「ウクライナの安全の保証に向けた最初の一歩だ」と応じ、和やかな雰囲気で会談が進むと思われた。
だが、バンス米副大統領が「平和への道は外交に取り組むことだ」と語ると、ゼレンスキー氏はロシア側が繰り返し合意を破ってきた経緯に触れ、対ロ接近を警告。バンス氏が反論し、部屋の空気が張り詰めた。
ゼレンスキー氏が自身の考えを説明しようとすると、トランプ氏が話を遮り、ウクライナが米国の軍事支援を当てにして第3次世界大戦を引き起こす危険があると指摘。「無礼だ」とゼレンスキー氏の態度を非難した。険悪なムードのままやりとりは終了した。
会談は、首脳間の非難の応酬で関係が悪化していた両国が「和解」を演出する狙いもあった。だが、合意文書の署名や共同記者会見は中止され、もくろみは大きく外れた。トランプ氏が描く停戦実現への道筋も軌道修正を迫られる。
トランプ氏は会談後、「彼(ゼレンスキー氏)は和平したいと言うべきだ」と述べ、戦闘継続を望んでいるとゼレンスキー氏を非難。自身のSNS上では「平和の準備ができたら、戻って来られるだろう」と述べ、ゼレンスキー氏に考えを改めるよう迫った。
一方、ゼレンスキー氏はFOXニュースとのインタビューで、ウクライナの国民が「誰よりも終結を望んでいる」と反論。停戦後にロシアが再侵攻する恐れがあると指摘し、米国によるウクライナへの「安全の保証」が必要だと改めて訴えた。
ただ、会談決裂について問われると「正確に状況を理解してほしかっただけだ」と説明。関係修復は可能だとの認識を示したが、トランプ氏への謝罪は拒否しており、難航が予想される。 (了)
ニュース提供:時事通信 (2025/03/01-16:04)

- keyword
- 米ウクライナ首脳会
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/17
-
サイバーセキュリティを経営層に響かせよ
デジタル依存が拡大しサイバーリスクが増大する昨今、セキュリティ対策は情報資産や顧客・従業員を守るだけでなく、DXを加速させていくうえでも必須の取り組みです。これからの時代に求められるセキュリティマネジメントのあり方とは、それを組織にどう実装させるのか。東海大学情報通信学部教授で学部長の三角育生氏に聞きました。
2025/06/17
-
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方